保育園「補助金100万円」にたかる業者の実態 ICT機器を定価より高く販売、契約書作らず
「このくらいの操作は、容易にできるのではないか」と想像する人もいるだろうが、現場での勤務経験がある筆者の感覚に基づけば、現実はそう甘くはない。職員が自由に使えるパソコンが複数台用意されている保育施設は、残念ながらそれほど多くない。さらに、そもそもパソコン操作が得意な保育士自体、かなり少数派だ。
ある園の園長は、「ICT担当者が1人いて、その人が保育士にやり方を教えてくれるならいいんだけど。いったい、何のためにやっているのか。園側の実務は実際ほとんど変わっていない。販売する業者が儲かっているだけではないか」と、本音を漏らす。園の中にICT機器を使いこなせる人間がおらず、専任の担当者もいないなかで、行政主導でおカネだけがバラまかれているのが現状なのだ。
「売っておしまい」の業者が出てきても当然
「ICTの導入は注文住宅を建てることと似ている」。こう語るのは、あるソフトウエアの販売代理店の幹部だ。注文住宅を建てる際には、家族の生活スタイルや生活時間帯、好みなどをさまざまに考慮するように、ICT導入にも「施主」である保育施設の職員がどこまでデジタル環境に適応しており、何を求めているのかなど、細かな聞き取りと調整が不可欠である。したがって、「何も考えずに任せてくださいと言うような業者は不誠実だ」(同氏)という。
同氏は、行政に対してもこう苦言を呈す。「行政はICT導入の費用対効果を確認するべきだ。業務手順の短縮など、あらかじめ業者に具体的な目標設定をさせたうえで、実際にどれだけ効果があったのかを調べなければならない」。
保育園が高価な機械だけ導入しても、利用方法を学ぶ余裕がなく、導入効果を検証する必要もないのなら、「売っておしまい」と考える悪質な業者が横行するのは当然のことである。
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