保育園「補助金100万円」にたかる業者の実態 ICT機器を定価より高く販売、契約書作らず

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A園がこの業者に支払った金額は、2園合計で約347万円。補助金は、1園で上限の100万円、もう1園で99万3000円分が支給され、150万円近く自費を切ることになった。

今となっては、なぜ入金してしまったのかが悔やまれるが、当時は次々と求められる書類業務に追われ、2月末の補助金入金最終締め切り日に間に合わせるべく、慌てて入金。「入金したら、じきに契約書が送られてくるだろう」と漠然と考えていた。

今回の不透明な契約によって業者の懐に入った200万円近い補助金は、言わずもがな税金である。2つの園と契約するだけでも多額の収益が得られるが、仮に多数の園を展開している事業者と一括契約することができたら、たちまちバブル的に潤うことになる。

「買っても使いこなせない」保育園が続出

このような事態を、自治体は把握しているのだろうか。筆者が大阪市の子ども青少年局に問い合わせたところ、「市はあくまで園と事業者の契約に対して補助するだけなので、チェックするのは書類がそろっているかどうかだけ。契約の内容まではチェックしていない」という回答が返ってきた。

なお、この補助金支給にあたっては、通常10万円以上の補助金を申請する際に必要な事前の相見積もりを提出する必要がなく、適切な契約が行われているかどうかは監査対象にも入っていない。

こうした契約時のトラブルのほかにも、ICT化を進めた園からは悲鳴が上がる。「タブレット端末での操作が難しく、使いにくい」「使い方がわからなくて業者に電話をしたが、コールセンターで1時間以上待たされた」「追加工事が必要だとわかったが、業者からそこまでは対応できないと言われた」といった声が、全国から寄せられているのだ。

デジタル機器に慣れた保育士がいない園では、業者が機器の納品に来たまま、箱から出されることもなく、ホコリをかぶって1カ月以上放置されていることもある。

はたして、今回のICT化促進策は本当に保育現場の負担軽減になっているのだろうか。

A園が購入したソフトウエアの場合、指導計画書作成機能を利用するためには、あらかじめ用意されているテンプレートを、各自治体や、園独自の内容に沿った形に全体的に修正しなくてはならない。タブレットでの操作ができ、「パソコン初心者でも簡単に使える」「保育の現場で、園児の前で使える」ことを強みとしているが、こうした操作をタッチパネルで行うことは容易ではなく、結局誰かがパソコンで書き換え作業を行う必要がある。

「QRコードでの職員の出退勤管理」も一見便利に見えるが、保育士が研修や行事の下見などで直行、直帰する機会は意外と多い。こうした場合は、わざわざ管理者が出退勤時間を本人に確認し、入力しなくてはならないのだ。

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