日本にとって人手不足はどれほど深刻なのか

今後10年を見ると過度に悲観する必要はない

就業希望者の非求職理由をみると、女性は「出産・育児のため」が全体の3分の1を占めている。このことは育児と労働の両立を可能とするような環境整備を進めることで、非労働力化している女性の労働参加をさらに拡大することが可能であることを示している。実際の労働力人口に就業を希望する非労働力人口を加えて潜在的な労働力率を試算すると、女性は20~54歳の年齢層で80%台となるが、実際の労働力率は2016年時点では概ね70%台にとどまっている。

男性については、25~59歳の労働力率が現時点で90%台となっているため上昇余地は小さいが、60歳以上の労働力率はさらなる引き上げ余地がある。

労働力人口を2026年まで維持することは可能

ここで、4月10日に国立社会保障・人口問題研究所から公表された最新の将来推計人口をもとに、今後10年間の労働力人口を試算した。

まず、悲観ケースとして、男女別・年齢階級別の労働力率が2016年実績で一定とすると、高齢化の影響で全体の労働力率は2016年の60.0%から2026年には57.4%へと低下する。15歳以上人口の減少ペースは今後加速するため、15歳以上人口に労働力率を掛け合わせた労働力人口は2026年には6200万人となり、2016年よりも473万人減少する(年平均でマイナス0.7%)。

一方、楽観ケースとして、男女別・年齢階級別の労働力率が10年後には現在の潜在的労働力率まで上昇すると仮定すると、全体の労働力率は2016年の60.0%から2026年には62.1%まで上昇する(男性:70.4%→71.3%、女性:50.3%→53.5%)。15歳以上人口は大きく減少するものの、2026年の労働力人口は6706万人となり、2016年よりも33万人の増加(年平均でほぼ横ばい)となる。労働力率を潜在的な水準まで引き上げることができれば、今後10年間は少なくとも量的な労働供給力は低下しないことになる。

もちろん、現在就業を希望している非労働力人口を全て労働力化することは現実的には厳しいかもしれない。ただ、過去を振り返ってみると、女性は現実の労働力率の上昇に伴い潜在的な労働力率も上昇している。このことは現時点の潜在的労働力率が必ずしも天井ではなく、様々な施策を講じることによりさらなる引き上げが可能であることを示している。

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