「情報が集まる社長」がやっている2つのこと 「経営に影響を与えない提案」こそ重要だ

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もちろん、社員から集まる提案や情報のなかには、ほとんど経営に影響を与えないようなささいなものもあります。「つまらない」と思える提案も多いはずです。しかし、その提案が間違った内容ではなく正しいと思える内容なのであれば、無視してはいけません。

つまらない提案こそ、きちんと受け止めるべきです。経営に影響を与えないような提案であれば、むしろ、すべてそのまま採用してしまえばいいのです。

心掛けるべき2つのこと

そして、社員全員の前で、あるいは、その職場に行って「今度から、こうすることにしました。これは○○君の提案です。皆で、協力して取り組んでいきましょう」などと話をすればいい。こうすれば、○○君も満足するでしょう。効果はそれだけではありません。

他の社員にも大きな刺激になります。「社長は、社員の提案をちゃんと受け止めて、実行してくれるんだ」と心のなかで思うことでしょう。そのようなやり方をすれば、「社長は、聞くだけで、俺たちの言うことはなにもやらない。言っても無駄、答えても無駄」とは言わなくなります。誤解を恐れずに極論をすれば、経営に影響のないような社員からの提案、意見は、すべて実行すればいいのです。

私はPHP研究所の社長時代、「職場代表委員会」という、社員側と幹部側の双方が集まって意見を交換する場をつくりました。毎月1回開きましたが、そこで社員側からさまざまな提案が出されました。時に厳しいやり取りもありましたが、つねに私は、経営に影響のない提案については、社員側からの提案を、(幹部側が反対していても)取り入れることを心掛け、そのように実施しました。

社員はたいへん満足し、納得してくれました。その委員会だけでなく、日頃においても、開けっ放しの社長室に誰もが自由に入ってきて、さまざまな提案をしてくれました。

ですから、衆知経営を進めるときに、社長が心掛けるべきことは、たった2点に集約されます。まずは社長の私だけで決めたのではない、社員の人たちの提案を参考にしたんだ、と話しながら、経営戦略や具体策を示すこと。そして、日頃から、経営に影響を与えない提案はできるだけ採用し、社員全員に提案者を明確にすること。この2つを心掛けて、部下に提案を持ってくるように求めれば、社員からの不満は出てこないと思います。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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