患者と医師がすれ違ってしまう本質的な理由 恋愛と同じで「正論が勝つわけではない」
この医師は結局、週に何時間も患者さんのご家族と話したり、転院先病院を見学してもらうなどして、1~2カ月後にようやくご家族に転院を納得してもらったそうです。本当はもっと早く転院していたほうが患者さんの回復にはよかっただろうというモヤモヤは消えないと話していました。
とはいえ、ここまで説明に時間を取れる医師はなかなかいない、というのが忙しい現場からみた正直な感想です。医療の仕組みや体制について知らないことが、こうしたすれ違いと医師への不信感を今も生み出し続けているといえます。
十分に話す時間がなく、ちょっとしたすれ違いから不安や不満が生まれる、と書くと恋愛のようですが、実際に医療と恋愛に共通していることがあります。それは「正論が勝つわけではない」、そして「相手に理解してもらうだけでは十分ではなく、心をつかみ行動に移してもらわなければいけない」という点です。患者さんが納得し、積極的に治療に取り組むためには、医師にすべてお任せするのではなく、相互に手を取り合う必要があります。医師と患者のコミュニケーションに、ちょっとしたサポートが加わるだけでも、このすれ違いを解消することができると考えています。
たとえば、今後みなさんが病院を訪れるときに、何をしておくといいのでしょうか?
症状など困っていることをまとめておく
患者さんを初めて診る医師が最初に行うことは、症状の問診です。そこから可能性のある病気を絞り、詳しい診察や検査を行い診断するためです。症状に関して適切な情報を伝えることは、よい診療を実現する第一歩ともいえるでしょう。
どんな症状が、いつから起きているのか。時間とともに症状の感じ方に変化はないか。自分が感じていることを待ち時間にまとめて、医師に最初に伝えるようにしましょう。具体的に症状が伝わると、同じ時間にできる問診の質が上がり、医師としてもより詳しく説明しやすくなります。
症状だけでなく、自分の置かれている状況も伝えておくと診断の助けになり、適切な治療法を選びやすくなります。
たとえば、妊娠可能年齢の女性を診た場合、医師は原則として妊娠、またはその可能性の有無を聞きます。薬や検査によっては胎児に悪影響を与える可能性があるので、特にそのような検査や薬の処方を行う前には確認を欠かしません。通常のシチュエーションでは言うのがはばかれるようなことも、医療においては重要な情報である可能性もあるので、隠さずに医師に伝えることが重要です。
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