患者と医師がすれ違ってしまう本質的な理由 恋愛と同じで「正論が勝つわけではない」

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またほかにも、たとえば手の痛みがある場合は「テニスをしているので毎週手を使う」「普段の仕事柄パソコンを使えないと困る」など、生活ぶりも、医師にとって診断にも治療にも重要な情報です。「不要かもしれない」と恐れずに、積極的にこうした情報も伝えるようにしましょう。

「質問はありませんか?」に答えられないときは

具合が悪いなか、医師から「最後に質問がありませんか?」と聞かれても答えられないということもあるでしょう。何がわからないかわからない!という人もいるかもしれません。

そうしたら、まずは「検査」と「薬」のことで不安なことや気になることがないか、考えてみてください。「なぜ検査しないんだろう?」「痛み止めはいらないんですが……」。

特に検査については、医師と患者の”常識”自体がすれ違っていることが多いと感じています。たとえば、インフルエンザの診断は最終的には医師の判断になり、検査は補助的役割です。検査でインフルエンザと確定できる場合もありますが、検査ではインフルエンザとは言えなくても状況から判断するとインフルエンザと医師が診断する、ということはよくあることです。

また、ノロウイルスの感染が疑われる場合は、通常検査は行いません。ノロウイルスに効果的な薬があるわけではないので、検査をしてノロウイルスと断定する意味があまりないんですね。また、ほとんどの場合で下痢止めのお薬を出すことはありません。これは、ノロウイルスが原因であろうとなかろうと嘔吐や下痢が続いているのであれば、体内のウイルスをしっかり出すことが必要で、下痢止めは治療に悪影響を及ぼすからです。原則として、脱水症状を防ぐため水分補給を続けながら症状の改善を待つしかありません。

ただ、患者さんは「なんで検査をしないのにノロって言い切れるのだろう? この医師は大丈夫なのか……」と不安になったり、「下痢止めを出してくれないなんて不親切な医師だ」と不満を抱いたりするかもしれません。質問しないまま、モヤモヤしたまま診察が終了してしまったら、すれ違いが続いてしまいます。

医師も人間ですから、患者さんが不安に感じていることをすべて把握することはできません。ですから、わからないことや説明に不満があることはどんどん言うべきです。困っているのもつらい思いをしているのも、薬を飲むのも患者です。医師としても、わからないことや不安なことは積極的に聞いてもらい、患者さんが納得して治療に励んでもらうことが何よりうれしいのです。

とはいえ、「何を聞いたらいいかそもそもわからない」というのが、多くの人にとって正直なところかもしれません。これは、医療についての知識を学ぶ場が学校教育などの場として存在していないので仕方がないことではあります。

しかし、医療に少しでも関心をもち、知識をもつことで、一人ひとりが受ける医療の質はぐっと向上します。医師にとっても、医療の知識がある患者さんと話すことで、より効果的な治療が実現できます。医師とのコミュニケーションにあと一歩、踏み込めば、不安な気持ちの解消にもつながるでしょう。

豊田 剛一郎 メドレー 代表取締役医師

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とよだ ごういちろう / Goichiro Toyoda

1984年生まれ。医師・米国医師。東京大学医学部卒業後、脳神経外科医として勤務。米国での脳研究成果は国際的学術雑誌の表紙を飾る。日米での医師経験を通じて、日本の医療の将来に対する危機感を強く感じ、医療を変革するために臨床現場を離れることを決意。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて主にヘルスケア業界の戦略コンサルティングに従事後、2015年2月より株式会社メドレーの代表取締役医師に就任。オンライン病気事典「MEDLEY」、オンライン診療アプリ「CLINICS」などの医療分野サービスの立ち上げを行う。

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