トヨタも勝てない「スズキ」インド戦略の要諦 現地取材でわかった圧倒的強さの理由

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近年、インドの飛躍的な経済的発展によって都市部を中心に中間層の所得は急激に拡大している。そのため、かつては夢の存在であった自家用車が身近なものとなってきた。かつてのアンバサダーは国営企業によって生産されたが、共産圏の車たちと同じように生産性は極端に悪く、年を追うごとにその性能や品質が向上するどころか、まったく改良が加えられず、品質は逆に悪化し、価格も上がるばかりだったという。

画期的な低価格で販売し、爆発的な人気を得る

そんなわけでインド政府は1970年代終わりに何とか自動車先進国の力を借りて競争力のある車の開発を行いたいと、交渉先を探していた。その中でスズキの鈴木修・現会長はインド市場の将来性を理解し、積極的にパートナーシップ交渉を進め、晴れて1981年に合弁会社が設立された。そこで日本国内でも大ヒットしていた軽自動車スズキアルトをベースとして排気量800ccのエンジンを搭載したマルチ800をインドとしても画期的な低価格で発売した。

その爆発的人気を得て、インドの自動車市場をあっという間にマルチスズキが独占することとなる。そんな経緯もあり、インドの自動車マーケットにおいてスズキは別格の存在であり、世界のトヨタですら足元にも及ばないのである。ちなみにインドにおける乗用車のマーケットシェアはマルチスズキが47.4%と断トツのトップ。ホンダが5.2%、トヨタが4.7%にすぎない〔いずれも2016年度【4月―3月】、出典:インド自動車工業会(SIAM)〕。

納車は家族にとって一大イベントだ(筆者撮影)

当地においては車を買うことは人生の一大イベントであるとともに、ステータスを表現するアイテムとして人々の大きなあこがれだ。だからあまり合理的すぎるモデルは人気がなく、低価格を売り物にしたタタ自動車の「ナノ」も人気車種とはなりえなかった。その風景は自動車産業全体が熱気に満ちていた1960年代の日本のそれとかぶっているようだ。

「販売店を訪れると、目を輝かせた顧客から“こんなすばらしい車を作ってくれてありがとう”と握手を求められたりするんです。顧客から心より感謝されるわけです。こんなやる気が出る仕事はほかにはありません」と前述の伊達氏は語る。

とはいっても、世界戦略を進める自動車メーカーにとってインドが中国に次いで大きなマーケットとなりうる可能性をもった重要な地域だ。トヨタをはじめ、各メーカーもインドでの成功を虎視眈々と狙っている。VWグループがかつてスズキと資本提携を結んだのも、このインド市場の制覇が目的の1つであったといわれるし、近年、トヨタとスズキの業務提携においても、同様のことがいえるであろう。

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