窮地の東芝、監査法人の変更は本当に可能か 上場維持に向けた弥縫策はもはや限界
候補として準大手監査法人の名前が挙がるが、「一般論として話があれば門前払いはしないが、東芝とPwCの両方はもちろん、場合によっては新日本からも話を聞く必要がある。引き受けたとして5月中の発表はどう考えても無理。ウチの人員でできるのかどうかもわからない」(準大手関係者)
東芝に融資する中位行の幹部は「主力行に東芝が監査法人の変更を伝えたという話もあれば、東芝幹部が金融庁に呼ばれて変更をやめるように言われたといううわさもある。情報は錯綜している」と半ばあきれ顔で語る。
監査法人を交代できたとして「(決算発表は)7月か8月にならざるを得ない」(前出の東芝幹部)。そうなったとしても「PwCがノーだったものに他の監査法人が適正意見を出せるのか」「適正意見が出たとしてそれを信じられるのか」といった問題が残る。
ここまでして東芝が「適正意見」を得ようとするのは、上場廃止を避けるためだ。
適正意見がない決算(四半期を含む)であっても、東京証券取引所が『直ちに上場廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らか』と判断しなければ、すぐに上場廃止とはならない。ただし、適正意見がない場合、内部管理体制に問題があるとされる特設注意市場銘柄(特設銘柄)に指定される。
東芝はすでに特設銘柄に指定されているため状況に変化はない。とはいえ、現在は指定解除に向けた審査中であり、適正意見がない本決算となれば上場廃止のリスクは高まる。
誰も引き金を引きたくない
そもそも東芝がまだ株式市場から退場を命じられていないことが不思議なのだ。
特設銘柄の審査では『内部管理体制等について改善の見込みがない』と東証が判断した場合は上場廃止となる。しかし現状では、有価証券虚偽記載、度重なる決算延期、そして適正意見なしの四半期決算と重なっても、東証は判断を下せていない。
東証だけではない。有価証券報告書等の提出遅延は上場廃止の要件になるが、金融庁が延期を認めれば、要件に抵触しない。東芝は有価証券報告書(四半期も含む)の提出延期を繰り返しているが、金融庁は延長を認めてきた。つまり、東証も金融庁も上場廃止の引き金を引けないでいるのだ。
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