「厄年」が何の宗教に基づくか知っていますか 信者でもないのに教会に行ってもOK?

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大将:あー、42でシニ、「死に」か。

島田:そもそも江戸時代に「厄を祓う」ということが庶民の間で流行しました。これは社会が安定してきたことも影響している。「今はうまくいってるけど、いつか災難が起こるかもしれない」と考えて、あらかじめそれを防ごうとしたんです。

で、男性の42歳っていうのは働き盛りで、人生の節目の時期でもある。災難が起こるときっていうのはたいてい人生の転換期ですから、奥さんが気にする。「あなた、厄は祓っておかなきゃ」となる。

ハナ:42歳か。確かにうちのお父さん、その頃ちょっと体調を崩してたなぁ。お母さんが「顧客が増えたから、いろいろとねー」って言ってた。

島田:そう。仕事上の転機が訪れる時でもある。そういう意味で、厄年歳って、なんとなくリアリティがある。

翔太:確かに。オレの25歳の厄も、入社3年目でいろいろ仕事を任されるようになって、しんどくて、ちょっとヤバイ時だった。

島田:その「ヤバイ」という感覚、「こういう時って、何か起こるんじゃないか」という感覚が、実は重要。厄祓いすることによって、不安な感覚を解消する。厄年って、そういうシステムなんですよ。

ハナ:じゃ、先にあったのは、「厄って、イヤだな」っていう気持ち?

島田:ま、その前提として、「人生、何が起こるかわからない」ということがある。「悪いことが起こらないように」って、みんなが願う。でも、「毎年厄祓いしろ」って言われても、面倒だし、納得できないわけですよ。

翔太:ゼッタイ、面倒くさいです。それに、そんなにしょっちゅう厄が降ってくるなんて、思えない。

宗教上の根拠は、何もない

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島田:そこで、42歳という実にちょうどいい時期に、厄年を用意しておく。

ハナ:あはは。不安にリアリティがあるんだ。だから、「よし、厄を祓おう」って気持ちになるのね。

島田:でも、なぜ42歳かというと、江戸時代にできた語呂合わせ、ということ。宗教上の根拠は、何もない。

翔太:なんか、バカバカしいっすね。どうしよっかな、このストラップ。

ハナ:あ、でも、「翔太が厄に遭わないように」って願うお母さんの気持ちは、バカバカしくないんじゃない? つけときなよ。

大将:お、ハナちゃん、ナイスフォロー。

翔太:あー、じゃ、やっぱつけとくかな。

これまで、宗教が存在しない国や民族は発見されていません。それは、宗教が世界中のあらゆる人々の暮らしの中に溶け込んできたことを意味します。人類はこれまで、宗教とともにその歴史を重ねてきたのです。
宗教について学ぶということは、この世界について学ぶことでもありますし、人類について学ぶということでもあります。宗教は私たちの暮らしに深く浸透していますから、それについて知らなければ、物事を本当には理解できない可能性があります。
島田 裕巳 宗教学者、作家

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しまだ ひろみ / Hiromi Shimada

1953年東京都生まれ。東京女子大学と東京通信大学の非常勤講師。1976年東京大学文学部宗教学科卒業。1984年同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員などを歴任。著書に『創価学会』(新潮新書)、『戦後日本の宗教史』(筑摩選書)などがある。

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