中国セキュリティー企業、一帯一路案件注力 習近平主席の肝入り、関連投資は数千億ドル

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 4月24日、中国の大規模な経済圏構想「一帯一路」に絡む案件を受注しようと、国内外のセキュリティー会社がしのぎを削っている。写真は北京市で3月撮影 (2017年 ロイター/Jason Lee)

[上海/北京 24日 ロイター] - 中国の大規模な経済圏構想「一帯一路」に絡む案件を受注しようと、国内外のセキュリティー会社がしのぎを削っている。比較的規模の小さい国内勢が現地スタッフの育成に努める一方、海外勢は規模や実績で勝ると期待を掛けるが、中国国有企業はセキュリティー確保は二の次でコスト抑制を優先しており、受注獲得は容易ではない。

一帯一路は習近平国家主席のお気に入りの構想で、関連する投資は数千億ドル規模。セキュリティー会社は中国人労働者やパイプライン、道路、鉄道、発電所などの警備といったサービスを提供している。

中国人職員は国内法で武器の所持や使用を禁じられている。そのため中国のセキュリティー会社は各国で現地スタッフを採用して訓練し、物流や計画立案に重点を置いている。

例えばチャイニーズ・オーバーシーズ・セキュリティー・グループ(COSG)は、武装勢力や反政府独立派による攻撃が起きているパキスタンで、国軍とつながりのある現地のセキュリティー会社と組みサービスを展開している。

現地メディアによると、パキスタン軍は中国絡みのプロジェクトの警備に1万4000─1万5000人の兵員を充てる計画だという。

中国パキスタン経済回廊(CPEC)は570億ドル相当で、一帯一路における単一のプロジェクトとしては最大規模。

一方、コントロール・リスクやG4S<GFS.L>といった海外のセキュリティー大手は、規模や経験を売り込み、コスト重視の中国国有企業から受注を勝ち取ろうと目論んでいる。こうした企業は軍が後ろ盾となっており、世界各地の危険地帯で業務を遂行した実績を持つ。

上海を拠点とするコントロール・リスクのパートナー、マイケル・ハンフリース氏によると、中国でのセキュリティーコンサルタント案件の3分の1程度が一帯一路に関連している。

ただ、COGSなど中国勢は、中国の国有企業は慎重な対応を求められるプロジェクトについては中国人に任せる方を選ぶとみている。中国のセキュリティ会社は推計5800社だが、海外の業務を手掛けるのは一握りで、大半は国内の案件に注力している。

中国の労働者が直面するリスクは多種多様で、予測不可能なケースが多い。また事態が急激にエスカレートすることもある。2015年にマリで中国国有企業の職員3人が殺害された際には、中国政府からセキュリティーの強化が要請された。

公式統計によると、2010─15年に海外で発生した中国企業が絡むセキュリティー事案は350件に達する。

しかしセキュリティー会社が有利な条件で案件を受注できるわけではない。セキュリティー会社は長期計画に基づいて準備を整えるのではなく、緊急事態が発生してから対応を求められる場合が少なくない。

コントロール・リスクのハンフリース氏は「多くの企業は問題が起きてしまってからセキュリティー会社にやって来る」と話す。こうした企業は労働争議などの理由から、事前に動くことができないままプロジェクトに着手してしまっているという。

(Brenda Goh記者、Michael Martina記者、Christian Shepherd記者)

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