欧州の政治リスクが後退した「3つの理由」

なぜマクロン氏は勝ち残ることができたのか

1つ目の理由は、米国の政治や社会の混乱が反面教師になっているということです。4月13日のコラム「米国はこのままだと衰退する危険が出てきた」でも述べていますように、トランプ大統領のような無知な人物には、世界一の大国の大統領はとても荷が重いといわざるをえません。政治が混乱するだけでなく、社会の分断までもが進んでいるというのは、長期的な視点に立てば、米国の国力や威信を損なうことになるのは目に見えているからです。欧州の人々のなかにも、そういった米国の深刻な問題に気づき始めている人々が徐々に増えてきているのでしょう。

2つ目の理由は、欧州各国のなかで英国のEU離脱は失敗するだろうという見通しが浸透してきているということです。この点についても3月30日のコラム「英国のEU離脱は失敗が目に見えている」で述べていることですが、欧州の人々は英国がEU離脱によって厳しい状況に陥ることを認識し始めているのでしょう。英国とEUの交渉は時間が経過すればするほど、英国の交渉力が弱体化していくことは避けられないからです。現時点ではシティから逃げ出す企業が続出していますが、そのような動きは英国全体に広がっていくことになるでしょう。

2016年からのポピュリズム政治の躍進を断ち切ったオランダやフランスの選挙結果が表しているものは、おそらくは、米国や英国の混乱・分断を見ることによって、欧州各国の有権者のなかで中道寄りのスタンスに戻る人々が増えてきているという現象であるのでしょう。あるいは、うそばかり並べたてるトランプ大統領を見ていて、政治に無関心な人々が極端な主張をするポピュリズム政党の躍進を警戒するようになってきている証左でもあるのでしょう。実際のところ、大半のEU加盟国ではEUへの支持率が上がってきているともいいます。

最後の3つ目の理由は、ロシアによる選挙への介入効果が弱まっているということです。ロシアは欧米に対し2016年から一貫して、国営メディアによる世論操作と治安機関によるサイバー攻撃を組み合わせた情報戦争を仕掛けてきています。これらの情報戦争は英国の国民投票や米国の大統領選でも十分な威力を発揮したことは実証済みであるといえるでしょう。いずれの投票の結果も僅差といえる水準であったので、ロシアの情報戦争が投票の結果に与えた影響を決して過小評価してはいけないのです。

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