北朝鮮危機は金正恩の「怯え」が原因だった 米国のメッセージで彼が感じる「命の危険」

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北朝鮮のミサイル発射に込められた意味を読み解く小川和久氏

しかし、今回の発射を考えるときに押さえておかなければならないのは、北朝鮮はこれまでとは違う反応を見せており、実を言えば、それは金正恩が発したメッセージから読み取れるということである。一言で言えば金正恩の「怯え」を示しているのである。そのこと自体が北朝鮮問題の現在位置を知ることとなる。ここで一部の情報専門家に共有されているミサイル発射の隠された狙いを説明したい。

まず、4発のミサイルが同時に発射される映像が公開され、世界にインパクトを与えたが、このこと自体、この発射が全くの政治的なショーであることを示している。移動式の発射台を4台並べるということは、実戦ではありえない。移動式のミサイルは通常トンネルなどに秘匿しておき、一度の反撃で全滅しないように数キロ離れて展開させ、そこから偵察衛星に発見されにくい曇天や夜間に発射する。そう考えると、この画像自体は、国威発揚であり、また対外的な示威,威嚇を目的とするもの,さらにアメリカと韓国に対して政治ショーであることを伝えようとしたもの、といってよいかもしれない。

1枚の写真から読み取れる情報

むしろ注目しなければならないのは、この発射を報道した「労働新聞」に掲載された写真と記事である。写真の一枚には金正恩が机上の地図を指示棒で指している姿が映っていた。

写真中で地図は斜めに映っていたが、これを画像解析すると、東倉里付近を中心とする半径1000キロメートルの円が、日本海から西日本を覆うように描かれ、4発のミサイルの軌跡が、約4.2度の角度で開きながらひかれていた。そして、金正恩の指示棒は着弾点より先の日本海上を示していた。

発射直後には、青森県の三沢基地を狙ったものという見方も流れたが、ノドンならぎりぎりだが、スカッドERでは、東海岸から発射しても届かない。描かれている射程内に入っている米軍基地は、長崎県佐世保の米海軍基地と山口県岩国の米海兵隊基地で、両方とも今回の米韓合同軍事演習に参加した航空機や艦船の基地である。

あえてスカッドERを使ったこと。地図にわざわざ、発射方向とは全く別角度にある佐世保、岩国が射程圏内にあることを示し、その図を「労働新聞」掲載の写真に映しこんだこと。

これはいずれも解読能力のある各国の情報機関を意識した情報の発信である。

次ページいままでと一線を画す発射
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