北朝鮮危機は金正恩の「怯え」が原因だった 米国のメッセージで彼が感じる「命の危険」

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実は、アメリカは、このことを北朝鮮にそれとなく伝わるようにしている可能性がある。そう思われるのは、実は日本の情報機関の人間にもそれを伝えてきているからだ。

ここで説明しておいた方がいいのは、日本の周辺から北朝鮮全域に狙いをつけているアメリカ海軍のトマホーク巡航ミサイルだけで500発はあり、また海上自衛隊とアメリカのイージス艦がもつ弾道ミサイル防衛能力も相当なレベルにある。あまり語られないことだが、先ほど説明した核の傘とともに、日本に対する攻撃を抑止する力となっている。合理的に考えれば、北朝鮮の攻撃に対する抑止は十分だ。しかし、いま米朝が行っているのは一種のチキンゲームであり、金正恩が100%、理性的に行動するか否かは、まだわからないのである。

日本に欠如している国際情勢を読む力

ともかく安全保障に関する出来事は、たった一つのことであれ、その本質、それが起きた背景、状況まで理解するためには、きわめて多くのことを合わせ読んでいかなければならない。どこまでのことを、読んでいかなければならないか。今回の北朝鮮のミサイル発射の例をとってみても、お分かりになると思う。

ただ、日本の場合、政治もメディアも、軍事だけでなく国際情勢について、広く深く正確に分析した解説を行っているとは必ずしも言えない。隠しているというよりは、あまり理解できていないから、というのが原因だと思う。島国だけに閉じこもって生きていけた時代ならともかく、日本自体が特に経済でこれほどまでに国際環境に依存しなければ成り立たなくなっているにも関わらずである。

結局、個々の日本人が、自分で国際情勢や危機を読み解く力、つまりリテラシーを高めていくしか打開する道はないのだと思う。個々の日本人が、国際社会の中で生きていけるレベルに達して初めて、政治もメディアも有権者や読者を満足させるだけの力をつけることができるのだろう。

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小川 和久 軍事アナリスト

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おがわ かずひさ / Kazuhisa Ogawa

1945年12月、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わる。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。近著に『戦争が大嫌いな人のための 正しく学ぶ安保法制』(アスペクト)、『日本人が知らない集団的自衛権』(文藝春秋)、『もしも日本が戦争に巻き込まれたら! 日本の「戦争力」vs.北朝鮮、中国』(アスコム)などがある。

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