”30代後半”が一番クリエーティブ アニメプロデューサー・石井朋彦の語る世代論

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宮崎監督、高畠監督、鈴木氏からの3方からの攻撃!

宮崎・高畑両監督に会うときは気が抜けない。宮崎監督は頭の回転が非常に速い。話の要点を最初にしておかないと、説明し終える前に「もういい」と打ち切られてしまう。高畑監督はまったく逆。伝えたい内容をきちんと順序立てて説明しないと納得してもらえない。さらに言えば、雑誌記者出身の鈴木氏からは、ジャーナリスティックな視点による質問があらゆる角度から飛んでくる。三者三様だが、会う前に入念な準備をしないと太刀打ちできないという点では同じだった。

こうした3人に鍛えられ、2004年に押井守監督の『イノセンス』をジブリが制作協力したことを契機に、石井氏は2006年にプロダクション・アイジーに移籍。プロデューサーとして、押井監督や神山監督の作品に欠かせぬ存在となった。

ジブリ時代の師匠が鈴木氏だとすれば、現在の師匠はアイジーの石川光久社長だ。ただ、鈴木氏と石井氏では“教え方”はまったく違う。鈴木氏が先生と生徒の関係のように部下に仕事を教えてくれるタイプだとすれば、アイジーの石川社長は、部下を信頼して仕事を完全に任せしまうタイプ。もちろんピンチのときには助けてくれる。

プロデューサー業におけるピンチとは、資金面でのことが多い。「すいません。予算オーバーしそうです」「わかった、いいよ」。経営者にとっては厳しい決断であっても、それをおくびにも出さない。石川社長のように石井氏も若手に仕事を全部任せてみたいが、「ちょっと勇気がない」と言う。

石井氏のような30代後半は「団塊ジュニア世代」と呼ばれる。「パソコンやインターネットを自在に使いこなせる世代だが、子供の頃は仲間たちと野原を駆け回って、棒切れや釘を使って何もないところからおもちゃを作って遊んだ」(石井氏)。いわばデジタルとアナログの両方を知る世代だ。クリエーティブな仕事をするには打ってつけともいえる。

また、U40世代は上司に飲みに誘われても断るなど、個人志向が強いように思われるが、「同世代間のつながりは意外に強い」と、石井氏は言う。

団塊ジュニア世代はさまざまな業界の中核社員として活躍している。「僕らの世代は自分に足りないものを仲間に頼って補うということを知っている」(石井氏)。その力を結集すれば、「必ず結果は出る」と石井氏は信じている。

(撮影:今井 康一)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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