1台のスマホが照らす豪州難民施設の真実

収容中のジャーナリストが実名で内部告発

彼の連絡先をインターネット上で探したところ、フェイスブック上にアカウントがあった。「まさか返信はそんな簡単には返ってこないだろう……」。ダメ元で友達リクエストを送り、メッセンジャーアプリで日本からメッセージを送ってみた。すると、数分後にリクエストが承認され、少したどたどしい英語でこんなメッセージが返ってきた。

「ハロー。(FBで)つながってくれてありがとう。今はまだマヌス島にいます。この収容施設と、私のジャーナリストとしての施設内部からの活動について、ぜひ話しましょう」。そう書かれたうえで、電話番号と、欧米諸国で主流のメッセンジャー・アプリ・ワッツアップ上でもメッセージができる旨、記されている。

すぐに返信を送ると、今度はなかなか反応がない。翌日の午後になっての返信には「この施設内部はインターネット速度がすごく遅いので……」というメールが来た。そこから、お互いのメールアドレスを交換して、早速密なやり取りを始めた。

クルド人ジャーナリストがスマホ発信に至るまで

イランで1983年に生まれたクルド人のブッカーニさんは、テヘランにある大学で、地政学の修士号まで取得して卒業した。

記者志望だったブッカーニさんは地元に戻り、イランの複数の新聞社に寄稿するなどフリーのジャーナリストとして精力的に働いていた。そんななか、2013年2月17日、同じクルド人の同僚たち11人が突如逮捕されるという悪夢が起きた。偶然その日はテヘランに外出していたブッカーニさんは、幸運にも逮捕を免れた。しかし、その仲間たちの逮捕事実を早速記事にして発表したため、自らの身の安全にも恐れを抱くようになり、3カ月間にわたって身を隠して暮らすことになる。

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