1台のスマホが照らす豪州難民施設の真実 収容中のジャーナリストが実名で内部告発

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
パプアニューギニア・マヌス島の難民収容施設で働くスタッフ(写真:ベルーズ・ブッカーニ氏提供)

スマホで発信される知られざる内情

彼のSNSをチェックしていると、公式発表では知りえない内部の最新事情も見えてくる。

たとえば、かのドナルド・トランプ大統領とターンブル首相の電話会談で話題となったさなか、渦中の難民たちは一体、どのような思いであの電話会談の報道を見ていたのか。

「もはや何も信じられない。目まぐるしく変わる報道の内容に、何を信じたらいいのかわからず、見えない先行きに希望を失っている状態だ」。ブッカーニさんは、仲間たちの落胆した思いを打ち明ける。

当初、オバマ政権下では、オーストラリア政府との間で彼らがアメリカに難民として引き取られる合意がなされていた。だが、トランプ政権になり、その取引の行方はにわかに不透明になったのだ。

この状況を早速、ブッカーニさんは記事にした。

タイトルは「トランプ大統領は”悪夢”か―彼は我々の自由への夢を打ち砕いた(ハフィントンポストオーストラリア版)」。

「トランプ大統領は、世界中の多くの人々にとって悪夢かもしれないが、ここマヌスとナウルに収容されている難民にとっては、日々の現実の中で、とりわけ悪夢となっている」という文から始まる。

この記事の中で、ブッカーニさんはバラク・オバマ前大統領との難民取引の合意がなされた当時について、こう述べている。

「われわれ難民は当時、オバマ大統領に手紙を書いた。このオーストラリアの収容施設からアメリカへ連れ出してほしいと。すると夢のようなすばらしいニュースである朝目覚めた。オーストラリアの首相が、マヌスとナウルの難民がアメリカに行けるだろうと公式に発表したのだ。われわれ難民はこのニュースに本当に喜んだ」

この喜ばしいニュースの後、収容施設内での難民たちの話題はもっぱら、アメリカ大統領選の行方となった。難民に対して厳しい姿勢を示すトランプ大統領が勝利した暁には、この合意の行方が不透明になってしまうのではないか――そんないささかの懸念を胸に、日々大統領選の報道を皆で注視していたという。

次ページ不確実で不安な日々
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事