1台のスマホが照らす豪州難民施設の真実 収容中のジャーナリストが実名で内部告発

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まさかのトランプ大統領誕生ののちは、日々将来への不安にさいなまれることとなった。トランプ大統領が、このオバマ政権下で合意した難民取引について「ばかげた取引だ」などとして突然ツイートで怒りをぶちまけるなど、夢見ていたアメリカ行きの可能性がいよいよ、不確実性を帯びてきたからだ。

大きな不安の渦の中

はたして、ここから何年の間、またこの収容施設に留め置かれるのだろう、トランプ大統領は再び考えを変える日は来るのだろうか――。今、難民たちは大きな不安の渦の中、日々を過ごしているという。

ブッカーニさんによると、最近になってアメリカ政府の関係者が取引の履行に向けてなのか視察に訪れ、指紋や写真などを取り、一部の難民認定申請者らに対し面談を行ったという。だが、はたして何人の収容者がいつアメリカに行けるのか、具体的なことは見えてこない。

ブッカーニさん自身も、「自分がアメリカに行けることになるのかまったくわからない状態だ。仮に行けることになったとしても、この施設に収容されている仲間たちの正義が確保されなければ、自分だけ離れることはしがたい」と考えているという。

やり取りの最後に、少しでも収容施設内での生活の癒やしになればと、桜が満開の日本の風景写真を送った。

筆者がブッカーニさんに送った写真(写真:筆者撮影)

「日本は美しいですね……いつか、訪れてみたい。きっとすばらしい国なのだと思います」

近く、またこの収容施設内の状況は動くかもしれない。スマホを通じた難民施設からの訴えは、いま着実に世界に届き始めている。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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