米国の教育熱の高さは大学だけでなく、初等教育から見られる。たとえば、米国では、優秀な公立小・中学校がある地域は地価にプレミアムがつくといわれる。成績不振の子供の親には、ほかの親から「この地域の住宅価格が下がるから、お宅の子供をちゃんと勉強させてくれ」というクレームまで来るという。
米国民はなぜそこまで教育におカネをかけるのだろうか。米国人の学歴と将来の収入には相関があり、失業率も高学歴者ほど低くなっているためだ。親子ともに、良質な教育を求める気持ちは極めて切実である。
このように、良質な教育の需要が学校運営費を上昇させ、ひいては、先に挙げた総額145兆円という学生ローンの膨張を招いた。
不良債権比率が11%に上る学生ローン
これだけ貸し込めば、貸し出しの質の悪化は必然である。毎四半期ごとに新たに延滞する学生ローンは、過去最高水準の3.6兆円にも上る。毎日3000人が新たに延滞する勘定だ。学生ローン全体の不良債権の比率は11%と、全債権平均の7倍に上る。
こうした借金の負担増を受け、米国では、最近親と同居するいわゆる「パラサイトシングル」の割合が増加している。2007年の約26%から最近では30%くらいになっている。こうした現象が続けば、米国の消費や不動産需要への大きな下押し圧力となる。
このような状況をトランプ政権も見過ごすわけにはいかない。学生ローンの8割が公的機関から貸し出されているため、不良債権の増加は国や地方の財政を悪化させる。
これに対し、最近は延滞債権回収の手続きに変化が出てきた。その1つが、延滞手数料の取り扱いだ。学生ローンが延滞した場合、回収を行う保証機関は、借り手から最高16%の手数料を徴収することができる。ただしあくまで、60日以上延滞した後の話だった。
ところがトランプ政権は3月に、これを60日未満の初期延滞の時点から請求できるように緩和した。保証機関にとっては朗報だが、借り手にとっては、これだけ高率の追加的支払いを迫られたら、返せるものも返せなくなってしまう。
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