「屋内禁煙」に踏み切れない日本は残念な国だ 外国人は日本に来るとガッカリしている

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実は当時、私はこれに反対していた。個人の自由への介入であり、社会のエリートたちが自分たちの生活様式を貧しい喫煙者に押し付けているように感じたからだ。しかし、実際に屋内禁煙法が実施されたとき、バーやレストランの空気が一夜にして変わったのを感じた。まるで空気が突然澄んだような感覚を覚えた。

子どもたちはたばこの煙を吸ったり、やけどする心配をしたりすることなく、親と一緒にレストランやビストロでの食事を楽しめるようになった。屋内での喫煙禁止を決めた当時のドミニク・ド・ビルパン首相にインタビューした際、彼も「今週末、多くのレストランやバーを訪れたが、その変わりようといったら……」と驚いていたのを思い出す。フランスの政治家が自らの功績をあんなに誇らしく語るのを聞いたことはほとんどない。

フランス人の考え方も変わった

今ではフランス人の3分の2が屋内禁煙法に賛成している。2000年以降、フランスではたばこの価格が2倍になった一方で、たばこの販売数は45%減少した。今、私を訪ねてフランスから訪れる親戚や知人が、日本での滞在中に最も失望するのはレストランやバーに入ったときである。望みもしないのに、煙まみれになってしまう場合があるのだから……。

日本もかつては、たばこに対してここまで寛容ではなかったはずだ。日本は1900年代に、世界で初めて18歳未満の喫煙を禁じた国の1つである。だが、日本人なら誰でも知っているように、この法律には抜け道がある。現在、たばこは何十万台もの自動販売機やコンビニで簡単に手に入る。もちろん、タスポが必要だったり、店員に年齢を確認されたりするが、誰かに買ってもらったり、ウソをついたりすることは容易だ。

たばこの価格も安い。定期的に値上げが行われているが、依然として世界の主要国と比べると安価である。日本のメビウスの1箱の価格は440円だが、フランスでマルボロ1箱は7ユーロ(約850円)と約2倍する。

安価で手に入れやすいうえ、飲食店でも楽しめる。喫煙者にとっては実に暮らしやすい国である。しかし、多くの日本人はこれでいいとは思っていないだろう。2020年東京オリンピックの開催を前に観光立国を目指すのであれば、まずはできるところから、世界基準に合わせていくべきだ。往生際の悪い日本政府でも、それくらいのことはわかっているはずである。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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