「屋内禁煙」に踏み切れない日本は残念な国だ 外国人は日本に来るとガッカリしている

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フランスでは1600年代からたばこは専売制だったが、1995年にたばこを製造する公社を民営化し、2006年に葉タバコ農家への助成金をやめた。一方、日本では今でも日本たばこ産業(JT)の株式の約33%を財務省が保有しており、全国に約5900戸ある葉タバコ農家が生産するすべてのタバコの葉を、JTが国際標準価格の約3倍の価格で買い取っている。日本政府は2015年、東北の復興資金を捻出のため、JTの完全民営化を模索したが、結局見送られた。背景には財務省の抵抗があったとみられている。

たばこ産業保護の話になると、税収に加えて必ず挙がるのが、葉タバコ生産農家への影響だ。が、もう1つ、たばこに「依存」している業界がある。コンビニエンスストア業界だ。2016年9月に厚生労働省が発表した「喫煙の健康影響に関する検討会報告書」によると、現在たばこ販売チャネルの主役は、自販機からコンビニに交代。「たばこ販売の約 3分の2はコンビニエンスストアが担っており、コンビニエンスストアにとっても、たばこは全体売り上げの約4分の1を占める商材となっている」という。

たとえば、ローソンの2017年2月期決算資料によると、たばこの販売額は4719億円と、全体の約25%を占めている。たばこを取り扱うコンビニに入ると、レジの後ろ一面にたばこが並んでいる光景は壮観だが、喫煙者がたばこのほかに飲料などを買うことを考えると、たばこは貴重な「客寄せパンダ」になっているのだ。

たばこ関連の損失額は4.3兆円に上る

たばこ擁護者は、日本の財政や経済にとってたばこは重要産業であると唱えている。しかし、これらの人々は経済的不利益や、たばこによる健康被害(とそのコスト)について語ることはない。たばこに関連する疾病の医療費や介護費、それに伴う労働者の減少など社会的損失は小さくないはずだ。

医療経済研究機構の試算では、関連疾患の医療費や、施設環境面への影響や介護・生産性損失などの総額は 4.3 兆円に上る。世界でも有数の医学誌である『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に今年1月掲載された研究論文によれば、日本の医療関連費の3.8%をたばこが占めている。

人的損失はどれほどだろうか。日本禁煙学会の作田学理事長によると、日本では昨年たばこにより13万人が死亡し、さらに1万5000人超が受動喫煙関連の疾患により死亡している。私がインタビューを行った海外の製薬企業のCEOらは、日本政府がたばこ産業を保護しながら、一方で、医療費を削減することを目的として製薬企業に医薬品の価格を下げる取り組みを実施するよう非常に強く求めていることに特にショックを受けている。

人口の高齢化が進み、公的債務が増大し、医療費が急騰するこの時代において、たばこ産業保護を続けることは無理がある。もちろん、嗜好品として認められている以上、たばこ産業を「殺す」わけにはいかないだろう。が、少なくとも屋内禁煙くらいには踏み切るべきだ。実際、49カ国で屋内での喫煙は全面的に禁止されている。フランスでは2007年2月に禁止されている。

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