海外一流ブランドがセールを一切しない理由 日本アパレルが疲弊した「構造的な原因」とは

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遣田:日本の場合、高度経済成長期以降に経済が急速に発展したことは大きいと思います。地方で伝統を守っていくよりも、いい大学に入って、都会でおカネを稼ぐことのほうにお得さが感じられる社会に様変わりしてしまった。

山田:効率的に物質的な豊かさを求める社会ですね。すると、手作業のものづくりはどうしても非効率に感じられてしまうんでしょう。実際、短期間で急成長できるビジネスではないので。

遣田:だからといって忘れ去られていくのはもったいないよね。日本のものづくり文化は歴史の積み重ねの中で形成されたもので、京都に行けば西陣織があるし、金沢に行けば漆器がある。それは一朝一夕では生まれえないものだから。

山田:私は昔パリに留学していたことがありますが、日本にはすばらしい織りや染めの技術があるのにもったいないと言われたのを覚えています。本当はそこからブランドが生まれるはずだ、と。遣田さんは外資系企業でのキャリアが長く、海外にもよく旅行されていますが、日本のものづくりに対する海外からの評価はどうですか?

遣田:やっぱり、品質への信頼性は高い。日本製を買えば安心っていう。

山田:日本の地方にあるアパレル工場でも、品質が評価されて、ここでは明かせませんが世界のそうそうたるブランドの洋服の一部が作られていたりする。

遣田:洋服に限らず、食もそうだよね。台湾や中国に行くと、現地の人がわざわざ日系の百貨店で日本の食材を買っているのをよく目にします。

山田:品質を重視しているということは、見掛けではなく中身を大切にしているということですよね。最近、文化に対する人々の目が肥えていると感じていて。最近、日本のあらゆるところで外国人観光客を見掛けますね。京都や東京など、大々的にPRされているようないわゆる“観光地”じゃなくても、自発的に魅力を感じ取って足を運んでいるのかなと。

遣田:日本人が海外に行くときもそう。昔はすべての行程がパッケージ化されていて、首都の名所を巡って現地の名産品を買えば満足って感じだったけど、今は自由行動ありのプランが多い。

山田:確かに。定番だから、人気だから、ではなくて、自分で体験を選んで消費する時代になり始めているんですかね。

「全身ヴィトン」がオシャレな時代は終わった

遣田:洋服にしても、ルイ・ヴィトンはすばらしいブランドだけど、いまや全身をルイ・ヴィトンで固めるのがオシャレな時代ではない。それはいい傾向だと思う。ブランドや流行などの上辺だけでないところを見抜く目が養われているのは、日本のファッション業界にとって希望かもしれないよね。

山田:ただ、ファッションの流通構造には課題があります。

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