米3月の雇用者数、10カ月ぶりの低い伸び 失業率は4.5%と10年ぶりの低水準に

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 4月7日、3月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が9万8000人増で、昨年5月以来の小幅な伸びとなった。写真はカリフォルニア州のレストラン求人広告。昨年9月撮影(2017年 ロイター/Mike Blake/File Photo)

[ワシントン 7日 ロイター] - 米労働省が発表した3月の雇用統計は非農業部門雇用者数が9万8000人増となり、昨年5月以来の小幅な伸びとなった。小売業が2カ月連続で減少したことが重しとなり、予想の18万人増も大幅に下回った。

ただ失業率は2007年5月以来、約10年ぶりの低水準となる4.5%に低下。労働市場の引き締まりが継続していることが示された。エコノミストは前月から横ばいの4.7%を予想していた。

バンク・オブ・ザ・ウエストの首席エコノミスト、スコット・アンダーソン氏は、非農業部門雇用者数の伸びは失望を誘う内容となったものの「米労働市場の基調的な力強さや勢いを反映しているものではない」と認識を示した。

雇用者の増加数は1月と2月は20万人を超えていたが、3月は減速。これまで暖冬の恩恵を受けていた建設業、製造業、レジャー産業などで雇用増の勢いが鈍ったことも要因として挙げられる。

3月は気温が低下したほか北東部が荒天に見舞われたことで、エコノミストの間では天候要因により雇用増が鈍ったとの見方が出ている。

アメリプライズ・フィナンシャル・サービシズのシニアエコノミスト、ラッセル・プライス氏は「データ収集期間に天候要因が大きく作用した可能性がある。今回の雇用統計以外の基調的なデータを見れば、雇用増はまだ堅調であることが分かる」と指摘。

ウニクレディト・リサーチの首席米国エコノミスト、ハーム・バンドホルツ氏は「過去数カ月にわたる暖冬により雇用が押し上げられていた。気温が平年並みに戻り、一部地域が雪嵐に見舞われたことでその反動が出た」とし、「労働市場の健全性について懸念はしていない」と述べた。

時間当たり賃金は前月比0.2%(0.05ドル)増加と、2月の0.3%増から伸びは鈍化した。前年同月比では2.7%増となった。

インフレ率が上向くなか、雇用が緩やかに増加し、賃金も徐々に上昇していることで、米連邦準備理事会(FRB)による6月の追加利上げに向けた軌道は振れないと見られている。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの米短期金利戦略部門責任者、マーク・カバナ氏は、FRBの6月の会合までにあと2回の雇用統計が発表されるとし、「今回の雇用統計によりFRBが短期的な見通しを変えるとは思わない」と述べた。

JPモルガンのエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「失業率が上昇に転じなければ、FRBは利上げだけでなく、将来の引き締めペースを加速させるとのシグナルを発せざるを得なくなる可能性すらある」とした。

労働参加率は63%と、11カ月ぶり高水準を維持した。労働参加率の改善について一部エコノミストは、トランプ氏が昨年11月の大統領選挙で当選したことを受け、失業者の間で雇用環境が改善するとの期待が生まれたことが一部要因となっている可能性があると指摘している。

第1・四半期の雇用者数の伸びは月平均17万8000人。このことは同四半期の成長率が年率1.0%近辺に減速したことは一時的なものである可能性があることを示している。

縁辺労働者や正社員を希望しながらパートタイムで就業している人を加えたより広義のU6失業率は8.9%と、前月の9.2%から低下し、2007年12月以来の低水準を付けた。

就業率は60.1%と、前月から0.1%ポイント上昇し、2009年2月以来の高水準となった。

部門別では、建設業が6000人増。1月と2月は大幅に増加していたが、3月の増加数は昨年8月以来の低水準となった。

製造業は1万1000人増。2万6000人増加した前月から鈍化した。

一方、小売業は2万9700人減。百貨店業界ではネット販売に軸足を移す動きが出ており、JCペニー<JCP.N>やメーシーズ<M.N>などが大規模な人員削減を実施するなか、小売業の雇用者数は2カ月連続で減少。アパレル小売は5800人減、生活用品小売は3万4700人減となった。

政府部門の雇用者数は9000人増加。連邦政府は減少したものの州・地方政府の雇用増により相殺された。

雇用統計を受け、ドルは対主要通貨バスケットで3週間ぶりの高値をつけた。米債価格は低下、米株価は小動きとなっている。

*内容を追加し、写真を差し替えて再送します。

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