「ミシュラン3つ星店」支える精神科医の存在 激しい競争を勝ち抜くには癒やしが必要

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セラピストを雇っているレストランはほかに聞いたことがないが、これからはそうする店も増えるのではないかと、ロカは語る。

「厨房とは厳しい規律と鍛錬の場とされ、虐待に近いこともまかり通っていた時代から、料理業界は進歩しなくてはいけない」とロカは言う。「私たちは調理器具の調子がおかしいと大騒ぎするが、人間というシステムの不調にはあまり注意を払わないできた」。

世界一のシェフが死を選ぶ業界

実際、「人間のシステム」は急激に破綻する場合がある。世界最高のシェフの1人とされたブノワ・ビオリエは、昨年自宅で自殺しているのが見つかった。スイスにある彼の店「レストラン・ド・ロテル・ド・ヴィユ」は、フランス政府が発表するレストランランキングで世界一に選ばれたばかりだった。2015年には、米国で「分子ガストロノミー」を広めた若手シェフのオマル・カンチュが自殺した。

「この競争が激しい世界では、成功するだけでなく、成功を管理する方法を見つける必要がある」と、ロカは言う。「客のテーブルに届くのは、それまでの強烈な感情の連鎖反応の産物だ。それは厨房だけでなく、小さな仕入れ業者との関係から始まっている」

プーチは、こうした感情が料理に影響を与えることがあると考えている。彼女はスペインの著名ビジネススクールESADEで人的資源を教える一方で、ハンガリーの医学者マイケル・バリントが唱えた「全人的医療」を土台にしたセラピーを行い、テニス選手やFCバルセロナで高く評価されるようになった。

彼女がアル・サリェーでセラピーを始めたのは3年前のこと。「あるとき食事をした後、厨房の様子を見学したいと頼んだの」と彼女は振り返る。それがきっかけで週1回のセラピーが始まった。

時にはロカ3兄弟だけを相手にセラピーをすることもある。「このレストランは、ファミリービジネスをうまく経営することも重要なカギですものね」。

(執筆:Raphael Minder記者、翻訳:藤原朝子))

© 2017 New York Times News Service

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