なぜ日本では未承認? 遅すぎる新薬審査 <シリーズ・くすりの七不思議>

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開発着手を早めるための規制の見直し、開発期間を短縮するための国際共同治験の推進などがその対策。だが、最大のポイントは審査期間の短縮だ。具体的には新薬の承認審査を行う組織の増員だ。

現在、日本の医薬品の承認審査を行っているのは、独立行政法人である医薬品医療機器総合機構(以下、総合機構)の審査業務部門。この審査人員を09年度までに236人増員する方針を打ち出した。

下グラフにあるように日本の審査担当者は米国の10分の1以下、英国の3分の1以下だ。グラフ中の日本の審査員197人はジェネリック(後発)医薬品や医療機器の審査も含む06年4月時点。新薬の審査に限ると07年1月時点で112人しかいない。これを10年3月末までに348人へ増員する。

進捗はどうか。初年度である今年3月末、170人へ増員するのが目標だった。が、実際は134人。目標より36人少なかった。来年3月末の人員計画を達成するには、あと59人を中途採用しなければならない。

総合機構の06年度の事務・技術職員の年間給与平均は752万円(平均年齢39・4歳)。新薬審査の担当者の年収は40歳で800万円前後とみられる。新薬の承認審査は、いわば医薬品開発の最先端。最新の動向を踏まえ、極めて優れた能力が求められる。それを担える人材は、製薬企業の研究者や大学の研究者、最先端の研究に触れている薬剤師などに限られるだろう。転職は給与だけでは決まらない、とは言うものの、はたしてこれらの人が総合機構の中途採用に応じるだろうか。

総合機構は今年度4回の公募を予定している。第1回では、約120名の大学既卒者からの応募があった。昨年度の技術系職員の公募では約1070人の応募があり「今年も業務説明会への参加者は多く、採用計画の達成に努力している」(総合機構の岸田修一理事)。

厚生労働省で、新薬の承認について担当している中垣俊郎・医薬食品局審査管理課長も「増員計画に支障があるとは思っていない」と、特に新たな予算措置を行う考えは示していない。

だが、今年度中に59人の中途採用、来年度に98人の増員という計画の達成へのハードルは高い。拙速に、力のない審査員を数合わせで採用しても意味はない。新薬審査の遅れは、患者によっては生死を分ける深刻なもの。政府はドラッグラグ短縮へどこまで本気に取り組む気があるのか。審査員増員の進捗で、その覚悟のほどが明らかになる。

(週刊東洋経済)

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