三菱電機、反対派の筆頭がIFRS導入のなぜ? 2011年、「IFRS強制適用」大反対騒動の結末

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だが、SECは2010年2月にロードマップの変更を表明。強制適用するかどうかを2011年に決めるという点は温存されたものの、早期任意適用は撤回、強制適用開始時期は2014年以降ではなく2015年以降に後ろ倒しされ、2011年12月には強制適用自体を延期した。

一方、日本は米国がIFRS強制適用に向けた動きをトーンダウンさせても、それに即座に追随したわけではなかった。

海外の企業との比較検討が可能な世界標準の会計基準で開示しなければ、「日本の証券市場は海外の投資家にソッポを向かれローカル化する」、「日本の意見はIFRSの組織内に人材を置いてこそ聞き入れられるのであって、強制適用はIFRSの組織内における日本人のポスト確保のうえで必須条件」といった強い危機感を、証券取引所や金融庁などが抱いていたからだ。

だが、結果的には米国よりも早い2011年6月に、自見金融担当相の政治判断によって強制適用の延期が決まった。この3カ月半前に東日本大震災が発生し、未曾有の危機に直面したことを機に、企業側がそれまで腹に納めていた不満を口にし始めたからだ。前出の要望書はその象徴といえる。

要望書提出19社中9社が移行決定済み

当時、IFRS導入反対の筆頭格と見なされた三菱電機も2019年3月期の第1四半期からIFRSへ移行する(撮影:今井康一)

日本におけるIFRSの導入に向けた議論は、2011年6月まではもっぱら行政主導で展開され、企業側への配慮が不足していた面のあることは否定できない。

2000年以降の会計制度改革によって、日本の会計基準とIFRSとの差異は、当時すでに相当程度解消しており、IFRSへの移行は技術的には多大な負担とはならないというのが、金融庁など強制適用推進派の皮膚感覚だったことも影響しているだろう。

2009年12月には、連結財務諸表規則を変更し、米国会計基準の使用期限を2016年3月期までとする決定を下している。かなり重要な決定でありながら、この決定に際し、米国基準採用企業への根回しを金融庁が怠ったフシがある。

今回、あらためて要望書提出企業に当時の真意とIFRSへの対応状況をヒアリングしてみたところ、「統合直前であること、最終的にどういった記事になるのか見当がつかない」ことを理由に回答を留保したJXホールディングス(現・JXTGホールディングス)、回答するかしないかも回答しなかったリコーを除く17社が回答した。(いずれも回答は3月24日時点もの)

17社のうち、東芝は「IFRSの導入自体に反対したわけでも、強制適用に反対したわけでもなく、導入にあたっての十分な議論・検討の実施と準備期間の確保を求めた」としている。

残る16社は「強制適用に反対したのであって、IFRSの適用自体に反対したわけではない」と回答。中でも日立製作所は「2010年から適用に向けた調査、研究、準備はしていた。強制適用は慎重にすべきとする意見に反対しなかったという立ち位置だった」という。

すでに19社中4社が移行済みだが、これ以外に移行表明済みの会社が5社あり、残る10社のうち、検討もしていないと回答したのはキヤノンだけだ。

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