ツバキ・ナカシマ、何のためのMBOだったのか 儲かったのはファンドと元社長だけ
「天晴れ」としか言いようがない。昨年12月16日、精密ボール世界シェアトップのツバキ・ナカシマが8年ぶりに再上場を果たした。筆頭株主である米系投資ファンド・カーライルグループは、再上場に伴う売り出しで280億円を手にしたのだ。
ツバキ・ナカシマは2007年5月にMBO(経営陣による自社買収)を実施して上場廃止になっている。当時、その理由を、「短期的な業績変動にとらわれず、激変する経営環境に対応し機敏に反応し、安定的かつ持続的に企業価値を向上しうる企業体質を構築するため」と説明していた。
ツバキ・ナカシマは最初、野村証券グループの投資ファンド、野村プリンシプルファイナンス(NPF)と組んでいた。その後、NPFは2011年3月に全株式をカーライルに総額387億円で売却している。
今回の売り出し価額は1株あたり1467円。保有する3775万(発行済み株式総数の89.41%)のうち、1910万株を放出している。一株当りの取得原価は1025円なので、手取り280億円のうち、利益はざっと84億円強となる計算だ。
1000億円の投資で231億円の利益が出るカラクリ
実はツバキ・ナカシマは2012年9月にも再上場の申請をしていたが、株式市場の地合いの悪さを理由に延期している。その際の売り出し価格は1株あたり1640円、売り出し株数も今回の約1.5倍を見込んでいた。実現していれば、カーライルはツバキ・ナカシマの取得からわずか1年半で、今回の1.8倍に相当する149億円の利益を手にするはずだった。
相場の地合いが悪かったと言っても、日経平均は今回とほぼ同水準だった。3年も延期した挙句に条件が悪化したように見えるが、実際は違う。カーライルは、2014年12月期にツバキ・ナカシマから67億円の配当を受け取っているので、手にした利益は売り出しと配当で、合計152億円に上るのだ。
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