ディズニーの新人キャストが15分で悟る本質

この「育て方」はどんな職場でも応用できる

パートナーズ像の前というのは、来園されたゲストが必ず通る場所でもあります。マップを手に取り、どこに向かうか話しながら歩くカップル、足取りの軽い学生のグループ、ベビーカーを押した家族連れ……。

それらすべての人は、1人残らず、笑顔だったのです。全員がいきいきとして、明るい表情を浮かべていました。15分が過ぎた頃、隣に立っていた先輩が、口を開きました。「なにを感じましたか」。私は迷わず「この笑顔に応えたいと思いました」と言いました。

するとトレーナーは、「それがあなたの仕事です」とほほ笑みました。

百聞は一見にしかず。会議室で1時間「お客様は大切です」と力説するのと、OJTでお客様のわくわくした顔を15分見せるのと、どちらがその後の行動を変えるかは、言うまでもありません。

OJTを実施するなら、業務手順を詰め込むのではなく、お客様の「喜び」や「感動」に接し得る体験を組み込むよう、意識してみてはどうでしょうか。

マニュアルは暗記させない

新人研修やスタッフ教育の際、細かなマニュアルを作成し、配布している企業は多いと思います。

ディズニーキャストには、実はマニュアルが存在しません。

どのボタンを押せばアトラクションが動くか、止まるか、といったような動作を記した手順書はあります。しかし、「お辞儀の角度」「笑顔のつくり方」というようなサービスマニュアルは存在せず、キャストは企業理念である「ゲストにハピネスを提供する」ことと、「SCSE(安全・礼儀・ショー・効率)」という行動基準以外、ほぼ従うべき事柄はないのです。

マニュアルがないことのメリットは、3つ挙げられます。

まず、「各人の裁量が広がり、モチベーションが高まる」こと。「自ら判断して動くことで、自主性が高まる」こと。そして、「想定外の出来事にも対処できる、柔軟性が生まれる」ことです。

以前、パーク内のレストランのキャストが、男性のゲストからこんな相談を受けたことがありました。

「サプライズでプロポーズしたいから、婚約指輪を料理に隠してくれませんか」

キャストは、基本的にゲストから物を預からないということは共通認識になっています。これはもちろん、万が一なくしたり、壊したりしたら大変だからです。しかし、そのキャストは、婚約指輪を預かり、ディナーコースの締めくくりであるデザートの中に忍ばせました。

そして結果的に、プロポーズは大成功。後日、その男性ゲストからキャスト宛てに1通の手紙が届きました。

「あなたのおかげで、私たち夫婦にとって一生忘れられない思い出になりました。もしよければ、結婚式に出席してもらえませんか」と、そこには感謝の気持ちがつづられていたのです。

このキャストがなぜこのような行動をしたのかといえば、ディズニーの企業理念である「ゲストにハピネスを提供する」ことを優先させたからにほかなりません。

そして、それをリーダーに事後報告したところ、大いにキャストは褒められたといいます。つまりリーダーもまた、同じ価値観を持っているのです。

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