スシロー、再上場で明らかになった「問題点」 回転ずし最大手、ついに再上場を果たす

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“勘”だけに頼っていた出店施策についても、「ビジョンマップ」と称した戦略図を基に、地域ごとの需要や店舗収益予測を細かく検証する手法を採用し、精度を向上した。

ペルミラの日本統括責任者で、スシローの社外取締役でもある藤井良太郎氏は現在のスシローについて、「顧客のニーズに合わせて様々な楽しみを提供できるようになった。新しいスシローへと進化することができた」と語る。

数々の改革が奏功し、ペルミラ出資後のスシローの既存店売上は5期連続でプラス成長を保つ。つれて業績も好調で、前2016年9月期は売上収益1477億円(前期比8.5%増)、営業利益75億円(同9%増)。今2017年9月期も増収増益を見込む。

脆弱な財務体質があらわに

平日にもかかわらず、店内はにぎわっていた(記者撮影)

念願の市場復帰を果たしたスシローだが、再上場に伴い明らかになった問題がある。財務体質の脆弱性だ。

再上場に先立って公表された有価証券届出書を見ると、「のれん資産」と「無形資産」(特にブランド)は計849億円と、総資産の7割近い額が計上されている。自己資本に対して3倍以上もの額である(2016年9月期)。 

ペルミラが株式を取得する際にLBO(買収企業の資産や将来のキャッシュフローを見合いに金融融資を受けて買収資金を捻出する手法)を実施したため、それに伴って計上されたものだ。

スシローHDはIFRS(国際会計基準)を採用しているため、毎期のれん償却費を計上することはないが、一方で厳しい減損テストが都度実施され、将来の十分な収益性が認められない場合は減損を計上しなければならない。つまり、同社は大きな減損リスクを抱えていることになる。

社外取締役の藤井氏は「回転ずしは景気の変動を受けにくく、安定している業態だ。さらに店舗内のスタッフの動きをストップウォッチでチェックし作業改善を図るなど、収益向上へ不断の努力をしている。減損リスクは非常に低い」と語る。

とはいえ、のれんや無形資産が巨額なだけに、今後の動向には留意する必要があるだろう。

借入金も多い。ペルミラが株式を取得した際に計上した借入金が多くを占めるのだが、2016年9月期の借入金は532億円で、自己資本比率は20%に過ぎない。

これに対し藤井氏は「キャッシュフローが潤沢に出る業態なので、十分に借入金を返済できると考えている」と説明する。EBITDA(利払い、税金、償却前利益)に対する負債の比率はかつておよそ4倍だったものが、現状3.5倍になった。中期的には2倍ぐらいを目指すようだ。 

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