EU離脱を控えEU域外との貿易拡大を急ぐメイ首相の行動も、焦っていたとはいえ拙速であったように思われます。トランプ大統領の就任直後、米国との「特別な関係」を強調して訪米し、大統領に国賓として公式訪英を促したところ、英議会や大半の国民から批判を浴びるようになっているのです。トランプ大統領の差別的な発言を踏まえ、訪英中止を求める市民によるデモ活動も広がってきています。思わぬところで、メイ首相は自らの求心力を低下させてしまったというわけです。
EU離脱の是非を問う総選挙実施の可能性も
いずれにしても、離脱交渉で時間を浪費するにつれて、英国では海外からの投資が減少の一途をたどり、景気の減速傾向が強まっていく可能性が高いでしょう。近い将来、離脱を支持した英国民のなかには、その厳しい現実をやっと認識するようになり、離脱の撤回を求める人々が増えていくことが予想されます。その結果として、英国内でEU離脱の撤回論が強く支持されるようになり、EU残留の是非を争点とした総選挙が実施されるような事態も十分に考えられるでしょう。
現在の英国の政治・経済システムは、英国がEUに加盟しているという前提のもと、長年にわたって試行錯誤を重ねながら構築されてきたものです。英国内で投資する企業もまた、英国がEUに加盟しているという前提で、経営戦略を修正しながらコツコツと積み上げてきたわけです。その大きな流れをご破算にするということは、それに伴う悪影響を緩和するための十分な時間と制度づくりが必要になります。英国が意地になって離脱を強行するようなことがあれば、これから数々の試練や苦難が英国全体を襲うことになるのではないでしょうか。
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