メイ英首相は英国を2019年に、非常に「ハード」なEU(欧州連合)離脱へと導く方針だ。EU単一市場からも離脱すれば英国が崖っぷちに立たされる恐れがあるにもかかわらず、同首相は今後のEUとの交渉に関する1月17日の演説で、英国の経済的利益よりも、ハードな離脱を主張する人々の要望を優先する意向を示した。
メイ首相がEU単一市場からの離脱を選ぶことは驚くに当たらない。彼女は経済学に関する見識がほとんど無く、その究極の目的は、首相として生き残ることだ。
そして同首相は、自身が長い間執着してきた移民受け入れ制限を実現すれば、「離脱」に投票した有権者の支持を得られ、英国を欧州司法裁判所の管轄から独立させれば、与党保守党内のナショナリストの歓心も買えると信じている。
「いいとこ取り」はダメなのではあるが
英国には、EUを離脱してもEUとの自由貿易は可能との見方があったが、メイ首相は今回の演説で、そのような「いいとこ取り」は不可能であることを、遅ればせながら示したわけだ。
こうした離脱は、英国とEUの双方にとって経済的な不利益となる。英国はEUとの自由貿易による恩恵を失い、英国を本拠地とする金融会社などはEU域内で自由に営業できる特権を失う。
メイ首相は英国が「EUに半分入って半分出た」状態ではいられないとした。そして世界貿易機関(WTO)の枠組み内で、複数の国と優先的な貿易協定を結び直す意向を示した。
ただし、EU関税同盟とは「準加盟国」として何らかの関係を保ち、「できる限り摩擦のない」貿易を目指すとした。だが、こうした形はWTOのルールに反している。
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