メイ英首相、EU単一市場からの脱退を表明  「ハードブレグジット」が明確な目標に

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 1月17日、英国のメイ首相は17日、欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴いEUの単一市場を脱退する方針を明らかにした。写真はロンドンで演説を行う同首相。代表撮影(2017年 ロイター)

[ロンドン 17日 ロイター] - 英国のメイ首相は17日、欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴い単一市場からも脱退する方針を明らかにした。

単一市場残留に向け妥協案を探るのではとの憶測を否定、ハードブレグジット(強硬離脱)を目標に掲げた。欧州市場への最大限のアクセス確保を目指すとともに、欧州以外の国々と独自の自由貿易協定(FTA)を締結していく構えで、大陸からの移民流入を制限する姿勢も打ち出した。

首相はEUとの対等な関係を探っていくと協調。「私が提案していることは、EU単一市場に留まることを意味しない」とした上で、「包括的で大胆、かつ野心的なEUとの自由貿易協定を通じて、EUへの可能な限りのアクセスを目指す」と表明した。一定分野で現在の単一市場の取り決めが維持される可能性にも言及したほか、最終的な離脱案について、議会での承認を求める考えも示した。

メイ首相が議会の承認を求める考えを示したこともあり、ポンドは急騰。対ドルで2.9%値上がりし1日としては1998年以降で最大の上げを記録した。

首相は演説のなかで、ノルウェーなどEUとFTAを結ぶ国々が利用している既存の枠組みを導入するつもりはないと言明、ソフトブレグジット(穏健離脱)を明確に否定した。

離脱交渉については、移民流入の制限、欧州司法裁判所(ECJ)の管轄からの離脱、EU関税同盟の正式加盟停止など12の優先事項を提示した。関税同盟への加盟は英国独自の貿易協定締結の妨げとなっているとしたほか、欧州とはなるべく摩擦のない形で貿易を維持したいとの考えを明らかにした。

英国は3月末までに2年間の正式な離脱交渉を開始する見込み。メイ首相は、今後2年間で離脱条件に関して合意し、新規則は必要に応じて段階的に導入したいとした。

さらに「EUとの関係が今後変化するに伴い、ビジネスが危機に陥ったり、安定性が脅かされることは誰の得にもならない。われわれは破壊的な危機の回避を求めており、英国とEUが新たな関係に移行する上で必要となる新たな取り決めを結ぶために全力を尽くす」と述べた。

メイ首相はEU解体を望まない考えも表明。「EUの成功はなお、圧倒的に英国の国益に最もかなう」と語った。

一方で、EUが懲罰的関税を主張すれば、企業をつなぎとめるため、税制面での優遇策を活用する可能性も示唆した。

ハモンド財務相は議会で、EUとの包括的な貿易合意が期待できない場合、強硬な姿勢をとる可能性を示した。

スコットランドのスタージョン行政府首相はメイ氏の演説後、「われわれの経済や雇用、生活水準への影響に関係なく、スコットランドが将来の選択ができない状態で、英国政府がEUや単一市場から離脱することは容認できない」と述べた。   

英自動車工業会(SMMT)は関税同盟参加の重要性を強調、ドイツ高級車メーカーBMW<BMWG.DE>は単一市場への無関税でのアクセス確保を求めた。

*内容を追加しました。

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