なぜ日本の「伝統工芸」は世界で売れないのか ホントはすごい「工芸大国ニッポン」の実力
この難局を打破してメーカー自身の手で工芸の未来を描くために、2017年3月1日、「日本工芸産地協会」を立ち上げました。参加しているのは、錫(すず)や銅の鋳造メーカーである能作、家具と木工品の飛騨産業、南部鉄器の及源(おいげん)など、日本の工芸産地を代表する一番星ばかりです。中川政七商店も会員企業の1社です。
これまでも国や自治体による工芸品業界の振興策は行われてきましたが、その多くは補助金を付けて外部のプロデューサーやデザイナーを送り込むもので、長期的に見て成功しているケースは、私が知るかぎりほとんどありません。たとえ一時的に良くなっても、期間が終了して外部人材が手を引けば元の木阿弥。こうした振興策に限界があるのは明らかです。
ものづくりだけにフォーカスするのではなく、工芸品メーカーの経営そのものを強くして、工芸品業界全体を底上げする。それも自らの手と頭と足を使ってやっていかないかぎり、工芸の未来は開けません。ただし、1社だけでは力も知恵も限りがある。だから、協会という器を使い、産地やメーカー間の連携を強化することにしたのです。
産業革命+産業観光で描く産地の未来像
これまで工芸の世界は地域や職能ごとに分断されていて、横のつながりが希薄でした。そのため、同じようなことで苦労したり失敗したりしても、その経験や学びを共有する機会がなかったのです。
協会の活動の1つは、年に数回開催する勉強会です。ブランディング、海外展開、人材などをテーマに、率直に腹を割って話し合う予定です。成功事例だけでなく、他所ではなかなか話せない失敗例も共有して、切磋琢磨する場にします。
もう1つは、年1回開催するカンファレンスです。第1回は、今年の5月に富山県高岡市にある能作の新本社で、未来の産地像をテーマに行う予定です。この本社がすばらしく、4000坪の敷地には鋳物独特の熱とにおい、音を体感できる工場や体験工房、能作の器を使ったカフェもあります。また、地元の観光情報を提供し、周辺の観光地へとつなぐハブ的な要素も取り入れています。まさに私の考える産地の未来像を体現しています。
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