若者を集めたくば「中二の心」をとらえよ! 数学界の有名人たちがカッコよかったので、僕は初め数学者志望だった

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 経済学者は実にいろいろなことに興味を持っている。社会に関する研究なら原則的には何でも経済学になる。

学校選択制については若手の研究者仲間で集まって、この本にも書いた。『学校選択制のデザイン』  (安田洋祐編著、2010年、NTT出版)

たとえば僕の研究テーマでは、入学を控えた子どもやその親が、希望する学校のリストを提出し、それを基にどこに通うのかが決定される「学校選択制度」のルールを、どのように作ればいいか考えたりする。不公平を極力避け、子どもや親の希望を最大限叶えることができるような仕組みを考えるのだ。

また、大学院時代の先生(前回ちょっと名前が出てきたロス先生)は、腎臓病患者のための臓器移植ネットワークの設計をしている。

どちらの問題でも、お金を利用する「普通の取引」ができない(臓器売買をしたら違法だし、公立学校は世界の多くの国で授業料無料だ)。僕たちはそういった場合に、どのように問題を解決するかを考えている。株どころか、経済に必要不可欠だと思っていたお金さえ出てこない、随分「ヘン」な研究だ。

「制服を配る」が、アフリカでの問題解決への助けに?

ほかにもたとえば、隣の研究室にいる同僚(デュパさんという女性)は途上国の開発問題を研究している。彼女は、最近の研究で「アフリカのケニアで、10代の女子学生に制服を無料で配ると妊娠が減る」ことを発見したらしい。

ケニアには、貧しさから制服が買えず、学校に行くことのできない女の子が、年上のお金持ちと避妊せずにセックスするということが多くあり、問題になっているのだという。学校に行かない女の子の働く場があまりなく、子どもを作って「永久就職」することがある意味「魅力的なキャリア」になってしまっているという事情もあるようだ。制服を配ると、そんな女の子たちが学校に行けるようになり、結果として妊娠が減るのだそうだ。

特にケニアや多くのアフリカの国では、エイズ問題も深刻だ。「制服を無料で配る」これは一見「ヘン」な政策だが、女性の人権問題、人口問題、エイズ問題を解決するにあたって、重要な助けになるかもしれないのだ(※)。また、単純に「年上の男性はエイズに感染している率が高い」というケニアでの統計的事実を教えるだけでも、かなりの効果があるらしい。

(※)ただし、彼女の実験においては妊娠や学校からの中退は減ったものの、性感染症の直接の低下は見られず、これについてはほかの政策との組み合わせで初めて効果が出たということだ。この研究についての正確な情報が知りたい方には、Dupasさんのホームページに置いてある論文(英語で書かれているし内容は簡単ではないが、開発経済学の専門家の研究が無料で読める!)の参照もおすすめしたい

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