「スマホ成熟社会」の次は、どのような世界か 大きく動き出すのは2020年代半ば以降?

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一方、C向けは難しい点が多いようだ。会場に自社のエンタメ系VR製品を持ち込んで、会場の人に体験してもらいPRする起業家もおり、筆者も体験させてもらったが、やはりまだコンテンツの面白さよりも、重量のあるヘッドセットをつけて現実から完全に切り離されることへの「違和感」のデメリットの方が大きいように感じる。この起業家も、「普通の人はまだデバイスを長時間付けるのは難しく、5分くらいで離脱してしまう。コンテンツに没入できる『オタク』向けの製品に特化している」と現実について語る。

「スマホ成熟社会」は2020年を超えて続く?

B Dash Ventures渡辺氏は「スマホ市場は成熟を迎えつつあるが、ガラケーの時代はざっくり10年以上続いた。これと同じように考えると、2007年に始まったスマホの時代は、2020年くらいまで、軽く過ぎていくのではないか」と話し、改めて、「次の世界」が本格的に現れてくるのは2020年代の半ばから後半ではないかという見解を示した。セッションにスピーカーとして登壇した、AnyPay代表取締役の木村新司氏も、「スマホというコンピューターを老若男女が1人1台持つ時代には、『個人の力をエンパワーメントする』ことが肝になる」といった内容を中心に語り、スマホ成熟社会を前提としたビジネスが、「個人」にフォーカスする形でしばらくは続く見立てであることを感じさせる。

VR、AR、MR関連が、本当の意味で「スマホの次」のデバイスとして普及する可能性があるのは、「物理的なものを付けている」という感覚が極限まで消え、まさに現実と区別がつかなくなるレベルまで技術が進化した時だろう。企業の従業員教育ツールや、コアなファンがいるゲームなどのコンテンツなど必要性が強く感じられるシーンでは、多少デバイスに難があったとしても没入してもらえる可能性があるが、マス層に受け入れられるためには、その問題を解決する必要がある。

デバイスとしてイメージしやすいのは極薄ウェアラブル型のデバイスなどだが、手で持つスマホと違い、顔という人間の重要なパーツに乗ってくることを考えると、消費者が違和感を感じないハードルはかなり高そうだ。「スマホの次」のビジネスは、未来を見据えれば今動き出す必要があるが、C向けサービスを行う場合は、しばらく苦しい時期が続くことになるだろう。今のスマートフォンと同じように、アプリをダウンロードして、個人の嗜好に合わせた「特殊現実」を体感することが当たり前になる世界は、まだ先になりそうだ。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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