いずれ「葬式と墓」は当たり前ではなくなる 納骨が増えていない本当の理由
2040年には166万人に達するという死亡者にも火葬場は対応できるというから冬場の混雑から派生した「火葬難民」の噂も、どうやら杞憂に終わりそうだ。
「ただしこれからは、火葬場を使う人たちは、時間帯をズラすなどして工夫していく必要があります。“待ち”が出るのは、葬儀の時間帯が集中してしまうから」(碑文谷さん)
現実問題として、今は葬儀も安さ競争になっている。しかも、家族葬のような小さな葬儀が増えているから、費用は安くなり、数は増えて手間はかかる。
「だから安さを求めすぎると葬儀社に勤める従業員の人件費の過度な圧迫にもつながりかねない。でも同時にお葬式とは本来“人の死を受け止める作業”なのに、昨今では、遺体の処理となってしまっているのが心配ですね」
死者が増えているのに、納骨件数は増えていない?
「お墓が足りない」ことも、最近のネット上では話題となっている。
「これもまた“ガセネタ”ですよね」と、前出の小谷さんは断言する。
「23区内でも売れてないんですよね。東京都だけの傾向ですけど、都立霊園の倍率だけは毎年高いんですよ。それは無縁墓になった人のお墓を更地にして売りに出していて数自体が少ないから。10とか20区画ぐらいのところに200人とか来るので、20倍30倍の倍率になる。青山とか赤坂あたりのお寺のお墓でも、数十万~100万円前後のお墓ですけど、あまり売れないんですよね」
2015年の日本の死亡者数は129万人で過去最多。これだけ人が死んでいても、実際にはお墓が売れていないという。
「お墓が足りないと騒がれ始めたのは、バブル時代の土地高騰のころ。地方ではもう墓は余ってるし、死者が増えても不足することはないでしょう」(碑文谷さん)
墓不足の心配がひとり歩きしているのだ。
「値段が高いので、みんな買い控えているのか、もうお墓はいらないと思ってるのか、ですよね。厚生労働省の調査報告によれば、死者の増加に比べて、お墓に納骨される件数が、ぜんぜん増えてないんですよ」(小谷さん)
ではみんな、どうしているのだろうか?
「放置したり、捨てたり、散骨したり、合葬してる人が多いのでしょう」と小谷さん。
死んでも、悲しむ人や墓参りする人がいない
また碑文谷さんによると、
「例えば夫婦世帯で暮らしていても、どちらか先に死んでしまっても、手元に置いている方は多い。お墓を持っていても、面倒だったり、おカネがかかるから、このままでいいやという人たちもいます」
実は葬儀業界、墓石業界では“葬儀も墓問題も、この先二極化する”と言われている。