年収3億円を稼ぐ74歳会長の衰えない投資熱 「良いモノを」「安いときに」「たくさん買う」

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2つ目がロシアへの投資だ。2年ほど前から原油の値段が下がったことをきっかけにロシア経済が不安定になったことを「チャンス」ととらえ、積極的なロシア株の買い増しに動いたという。日本円で80億円を超えるロシア株は現在価値で110億円程度になっているが、「まだまだ伸びるはずだよ」と本人は売り時ととらえていない。想像を超えた現地調査と投資額の決断を実行するスピードにはいつも舌を巻くが、やはり一流の投資家というのはそういうものなのだろう。

3つ目が船関連ビジネスの買収だ。景況感に大きく左右される印象の強い船関連のビジネスだが、「モノを運ぶってなくなるはずがない」と言い切り、取締役会の説得に動いているという。こちらはまだ設備投資前の段階だが、「数百億用意する必要があるね」と言い、取締役会のメンバーもさぞかし大変なんだろうな、といつも感じている。

共通するキーワード

これら3つのビジネスに共通するキーワードを挙げるとすれば、「差」に対する感度、ということになるだろうか。「地域差」もあるだろうし、「情報差」もあるだろう。または「時間軸としての差」もあるだろうし、もちろん「為替差」もあるだろう。

清宮さんは言う、「人はそれぞれいろいろ考えて動くわけだから、いろんなところに差が生じる。それは当然だし、儲けにつながる。差が生まれそうな最初のところでガシッとつかまないとね。ニッチビジネスと呼ばれるものがあるが、私はあれには反対。参加者が少ないと差が生まれにくいから大きくならないよ」。

言い得て妙とはこのことか。一般的な話に置き換えれば「ある種の産業にひずみが出てくるのを、世間が知る前に投資する」ということで、企業の株式を上手に買う、という単純な行為によく似ているのだ。また、なんらかの理由で安くなっている、本来的には高い価値のものを安く、たくさん購入するという、バリュー投資という名のウォーレン・バフェットの投資哲学ともさほど変わりがない。

「良いモノを」「安いときに」「たくさん買う」。清宮さんが多額の資産を保全できている理由は、まさにこれを愚直にやっているからといえそうだ。

そんな清宮さんも、長らくロータリークラブの会員でもある。人の面倒を見るのがとても好きだ。海外からの留学生を何度も自宅に受け入れたという。ごく普通に庶民的なバーベキューも楽しむ。やっぱり普段は隣にいても富裕層とは気がつきにくい。

「今、興味があるのは農業だね。コショウなどの栽培を考えている人に投資しようと思うんだ」。どうやら香辛料のビジネスには差が生じ始めているようだ。まだまだこの人の投資意欲は衰えそうもない。

増渕 達也 ルート・アンド・パートナーズ代表取締役

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ますぶち たつや / Tatsuya Masubuchi

1968年生、1992年東京大学卒業後株式会社電通入社、2002年富裕層向け雑誌セブンシーズを発行する株式会社セブンシーズ・アンド・カンパニー代表取締役に就任。2006年富裕層向けライフスタイルマネジメント会社、株式会社ルート・アンド・パートナーズ代表取締役に就任、現在にいたる(www.rpartners.jp )2013年にはシンガポールにも進出、日本のみならずアジアの富裕層マーケティングに関する造詣が深い。

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