デフレが日本を救うわけがない
さて、手始めに増田氏のデフレ擁護論からコメントしていこう。まず行き過ぎたインフレがいいわけないが、長期間続くデフレは経済衰退の元凶なのは(そのデフレの根本原因である人口動態の変化も含めて)間違いない。
別にアベノミクスがすごいわけでもなんでもなく、以下で話すことは私の人生35年の中、もっとも当たり前のハナシである。日本は、実物経済では需給ギャップが解消できず、他国がインフレに見舞われるなか(実際どこの国にいっても、行くたびに値段が上がっていた)、日本でだけずるずるとデフレが続いてきた。値段が下がればコストカットに動き、給料も上がらないので消費も低迷し、需要が落ちるので生産も落ちる、という経済停滞のスパイラルを起こすのが我々が長年目にしてきた “悪いデフレ”である。
どこぞのサイトにカットアンドペーストで張り付けられたこの記事をお読み中の若者の皆さんは、もはやこれで読む戦意を喪失されたかもしれない。しかし安心してほしい、平たくいえば以下の通りである。
あなたがおにぎり屋さんを営んでいるとき、100円のオムスビが来年90円、再来年80円になり、人口は減って売り上げ数量は落ちると知っていたら、将来所得が落ちるのを見越して消費を控える。そしてあなた自身もオムスビを買う財布の紐を締めるので、ますますオムスビの値段が低下する。確かにオムスビの中に入っている鮭のノルウェーからの輸入コストは一切れ10円から8円に落ちたが、全体的なインパクトを考えるとオムスビ屋の将来は極めて不安で、開業に誘った中学時代の同級生、鈴木をクビにしようか、というハナシになるわけである。
インフレ期待で、お金を貯蓄から消費に回す
さて、日本の場合、急速に進む高齢化と人口減少、財政赤字増大と年金財政の破綻などの構造的問題が深刻で、経済の期待値(これが消費や投資に影響する)を上げる“生産性拡大ストーリー”を描くのは容易なことではなく、現金を使わず持ち続けていたほうが現金の購買力が上がるデフレが続いてきた。
したがって手っ取り早く名目のインフレ期待を上げてかつ財政赤字の経済全体に対する比率を下げるための金融大緩和が行われているわけであるが、これは債権保有者の富が相対的に吹き飛ばされる点と、行き過ぎた場合日銀と円への信認が崩壊することが挙げられるのだが、今のところ日本はハイパーインフレを警戒するような水準では決してなく、また損している人も気づいていない。
ポイントを繰り返すが、インフレを通じて経済を良くしようという単純な話ではなく、デフレスパイラルから抜け出すべく、インフレ期待を高めて消費と生産を高めよう、というハナシであり、バランスとタイミングと状況判断を間違えなければ、それほど批判される政策ではない。
なお増田氏の自民党による公共投資大拡大への批判はあたっており、その通りだと思うが私は自民党もさすがにそれほど愚かではなく、期待値を高めるための空手形で、実行はしないのではないか、と思っている。
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