デフレや円高の良い効果と悪い効果、どちらが大きい?
デフレや円高にも輸入価格が下がるなどの長所があるが、日本はネット輸出国であり、円安が輸出に与える経済効果の方が、円高が輸入に与える経済効果より大きい。確かに円高では一部の輸入産業は潤い消費者価格は低下するが、1ドル75円といった極端な円高水準では、そのマクロ経済効果は輸出の落ち込みと株価への影響と資産価格効果を通じた消費の減退を上回らない。
ちなみにインフレを目指したアメリカが結果的にジニ係数が高まり貧富の格差が広がったというのはいくらなんでも荒唐無稽であり、残念ながら因果関係は全くない。実際日本でも“失われた20年”の前は緩やかなインフレだったが、デフレの今よりよっぽど所得格差は小さかった。
低賃金の人が増えているのはアメリカに限らず世界平均を遥かに上回る所得水準を享受してきた先進諸国のどこでも起こっており、他国の低賃金労働者の生産性が上昇を続ける限り、日本でも生産性を高める努力がなければ、労働コストは同一賃金に向かって収束していく。
ミクロでは富の分配は当然変化し、得する人と損する人が出るのでそもそも一般化できないのだが、アベノミクスを批判したいがためにデフレまで擁護すると、反アベノミクス陣営の論理の信頼性が大きく毀損されるだろう。
長くなってしまったので、“後編・中国崩壊論”への反論は、もしこのレポートに人気があった場合のみ、次回に続けることにしたい。
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