震災6年、福島原発の廃炉作業は「登山口」だ

燃料デブリ取り出しへの遠い道のり

ようやく成果が見えてきたのが、建屋内に流入する地下水の削減対策だ。

汚染水は、溶け落ちた核燃料に地下水が触れることで増え続けてきた。原発事故以来、東電は汚染水の処理や保管に悩まされ続けてきた。敷地内は汚染水をためたタンクで埋め尽くされつつある。地下水の流入を減らすことができれば汚染水の発生抑制につながるだけに、実効性のある対策が模索されてきた。

地下水流入抑制対策の切り札と目されてきたのが、凍土方式の「陸側遮水壁」だ。

原子炉建屋周辺の1.5キロメートルを囲って配管を巡らせ、零下30度の冷却材を循環させる仕組みだ。配管は建屋を取り囲む水平の管およびそこから地下30メートルまで垂直に延びる配管で構成されている。垂直の配管の間隔は約1メートル。その周辺の土を凍らせて壁を作る。凍土壁はトンネル工事などでしばしば利用される工法だが、福島第一での規模はこれまでにも例がない。

凍土遮水壁の冷凍機プラント電気室(代表撮影)

今回の取材では、敷地の高台にある冷凍機プラント電気室を取材した。冷却は順調に行われており、地中の温度はほとんどの地点で零度以下を表示している。

もっとも、凍土壁の効果については疑問も抱かれている。原子炉建屋周辺の地中にはトレンチ(坑道)があるほか、砂礫(されき)など凍りにくい箇所もある。更田豊志・原子力規制委員会委員長代理は、地下水流入対策の本命は凍土壁ではないとの認識を示したうえで、地下水くみ上げ用の井戸である「サブドレンの復旧を急ぐべき」と事あるごとに強調している。

地下水流入対策は道半ば

建屋の周りをいっぺんに凍らせた場合に凍土壁が影響して周辺の地下水レベルを急低下させ、建屋内にある汚染水との水位が逆転して汚染水が外に漏れ出すのではないか――。原子力規制委はこうした事態を懸念した。そのため原子力規制委は、東電が当初計画した山側からの凍結開始を認めず、東電は地下水位に比較的影響を与えないとみられる海側からの凍結開始を余儀なくされた。

東電は計画よりも1年遅れて2016年3月31日に海側全面と山側の一部の凍結を開始。その後も段階的に山側の凍結範囲を広げてきたが、未凍結の部分などから地下水が建屋内に流れ込み続けた。今年3月になってようやく、最後の1カ所を残したうえで、未凍結箇所への冷却材の注入が認められた。2カ月ほどかけて効果を確認した後に、東電は最後の1カ所の凍結の認可を得たいとしている。

汚染水対策では、1号機タービン建屋内の汚染水の浄化も進みつつあり、東電は東京オリンピックの年である2020年度までに汚染水問題にケリをつけたい考えだ。凍土壁が効果を上げることができれば2年前倒しできると試算しているが、未知数の部分が多い。

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