日立はなぜ原発合弁事業を減損するのか? 原発ルネッサンスに踊ったのは日立も同じ
日立製作所が2月1日に発表した2017年3月期第3四半期(2016年4~12月期)決算は売上高が9.8%減の6兆5193億円、調整後営業利益(IFRSであるため本来営業利益という項目はない。会社四季報などで採用しているIFRSでの営業利益とは異なる日立の定義によるもの。以下、営業利益)は8.6%減の3731億円となったが、税負担の軽減などで純利益(親会社帰属)は10.6%増の1912億円だった。
同時に発表した2017年3月期予想では、営業利益のみ従来予想から200億円引き上げて5600億円(11.8%減)とした。売上高や純利益はこれまでの予想を据え置いた。
第3四半期の売上高、利益ともマイナスの大きな要因は、日立物流などの株売却による事業再編と円高(3四半期累計でドル15円、ユーロ16円)である。それらを除けば小幅ながら増益といえる。
地味な決算に透ける原発リスク
業績予想の上方修正にしても半分は為替要因で、残り半分は「原価低減、収益性の改善」(西山光秋CFO)だ。トランプ政権による不確実性が高まる中で十分かどうかはわからないが、多少のバッファも見ている。
着実に実力値が上がっているともいえるし、業績が伸びなやんでいるともいえる。だが、今回の決算でもっとも注目すべきは、米国での原子力事業に関連して700億円の損失(営業外)を業績予想に織り込んでいると明らかにしたことだ。
2007年、日立は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と原子力発電事業を実質統合し、日立が約8割、GEが約2割出資する「日立GEニュークリア・エナジー」(茨城県日立市)と、GEが6割、日立が4割を出資する「GE日立ニュークリア・エナジー」(GEH、米ノースカロライナ州)の2社を設立している。
このGEHの子会社であるGE日立レーザーエンリッチメント社(GLE)が手掛けていたのがウラン濃縮の新技術開発。この技術開発を断念し、見込んでいた収益が得られなくなったとして日立がGEHに出資する800億円のうち、700億円を減損したのだ。
GEHは現在、米国でGEが手掛けてきた原発の保守・部品事業で稼いでいる。日立のGEHへの出資額は約800億円だったという。出資比率の40%から割り戻すと、日立はGEHの企業価値を2000億円と算出していたことがわかる。
GLEがこのウラン濃縮技術の開発にどれだけ費やし、そのうちどれだけが資産計上されていたかは開示されていない。ただ、日立の説明では1000億円といったレベルには達してはいなかったようだ。
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