震災6年、福島原発の廃炉作業は「登山口」だ 燃料デブリ取り出しへの遠い道のり

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原子炉圧力容器真下の作業床(代表撮影)

放射線量は、格納容器外側で毎時5マイクロシーベルト、格納容器内部のペデスタルと呼ばれる圧力容器を支える台座の外側で毎時20~40マイクロシーベルト。炉心溶融事故を起こさなかった5号機では、このように人間が立ち入ることができる線量レベルだが、2号機の格納容器内では、今回のロボット調査により、まるでケタの違う毎時約210シーベルト(1シーベルト=1000ミリシーベルト、1ミリシーベルト=1000マイクロシーベルト)という極めて高い放射線量が計測された。そこに数分いただけで命を落とすレベルだ。放射線量の高さが、廃炉作業の行く手を阻んでいる。

2号機では2月16日に「サソリ型ロボット」の愛称を持つ自走式ロボットが格納容器内部に向けて投入されたが、CRD交換用レール上の堆積物に乗り上げてしまい、目標としていた原子炉圧力容器真下の作業床に到達することはできなかった。

燃料デブリは突き止められず

2月23日の記者会見で東電の増田氏は、廃炉の核心部分である燃料デブリ取り出しに向けての調査が難航している事実を認めた。同氏は2017年度に予定されている燃料デブリ取り出しの方針決定について、「今のままではざっくりとした方針しか決められないと思っている」と言及。方針決定の前に、追加調査を実施する考えを明らかにした。

内田俊志・福島第一原発所長(代表撮影)

「もう少し2号機内部の情報が欲しい。原子炉圧力容器の下部がどのようになっており、燃料デブリの落下や(圧力容器を支える台座の)外にはみ出しているかがわかればはるかに緻密な取り出し方針を決めることができる」(増田氏)

現地取材時に記者会見に応じた福島第一原発の内田俊志所長は、「われわれは未知のことに挑戦している。いつも想定外の連続だ。課題を克服しつつ一歩一歩進むしかない」と廃炉作業の難しさを語った。

廃炉作業の現段階について、「どういう装備が必要かがわかってようやく登山口に来たところだ」という増田氏の言葉は、廃炉の核心部分の入り口にたどり着いたという手応えとともに、前途の困難さを物語っている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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