他方、想定を超えた移動パターンも現れているようだ。道南のマスメディア記者が直接、調べたところ、例えば「青森県十和田市から自家用車で青森市のフェリー埠頭へ」⇒「そのまま徒歩でフェリーに乗船して函館市へ」⇒「観光を楽しんだ後、帰路は北海道新幹線で新青森駅へ」⇒「新青森駅からフェリー埠頭へ」⇒「自家用車で帰宅」といった移動をする旅客が存在したという。
十和田市の最寄りの新幹線駅は七戸十和田駅で、車なら30分弱の距離だが、七戸十和田駅から函館駅までは、指定席なら9000円以上、ネット限定で2週間前までの予約が必要な割引切符でも6000円強かかる。一方、十和田市から青森港までは1時間半ほどの時間距離だ。そこで、どのみち自家用車による移動を避けられないなら、なるべく安価に、かつ船旅と北海道新幹線の旅をともに楽しめるような行程を組んでいる人が出始めている、とみられる。
このほか、函館港から津軽海峡をフェリーで渡り、さらに新青森駅へ移動して、東北新幹線のグランクラスを利用するカップルもいたといい、想定を超えた旅のバリエーションが生まれている。
「新幹線は高くて使えない」
ビジネス面でも、出張時に時間と経費のバランスをみながら、片道を北海道新幹線、片道をフェリー利用している人が出始めている。その1人は「新青森駅からフェリーターミナルまでタクシーを利用した時、運転手が『最近、フェリー埠頭へお客を乗せる機会が増えた』と話していた」と証言する。
もちろん、より切実な理由で、フェリー使用を余儀なくされている人は少なくない。筆者が昨年12月、青森市内での授業で話す機会を得た函館市の若い男性は「以前なら特急列車で気楽に往復できたが、今は往復ともフェリーだ。新幹線は高くてとても使えない」と表情を曇らせていた。特に函館市民や経済団体には「新幹線を使いたくても使えない」という不満がくすぶる。
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