「新幹線は高い」青函間にフェリー復権の兆し 乗客増加、安さと速さで新幹線と棲み分けか

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筆者は2014年度以降、青森学術文化振興財団の助成を得て、整備新幹線が青森県や全国各地に及ぼした効果・影響を検証しているが、本年度、青森市民や函館市民を対象に実施した郵送アンケート調査の結果、北海道新幹線の開業を歓迎し、青函交流の活発化を期待する声が目立つ一方で、「子どもの修学旅行の費用が上がった」「特急料金が高くなったので青函を往来する回数を減らさざるを得ない」「このままでは、青函交流が衰退するのでは」といった回答が、海峡を挟んで散見された。

青函圏の将来像を探った新幹線フォーラム=2017年1月28日、青森市(筆者撮影)

これらの結果は、1月28日に青森市内で開いた「新幹線フォーラム」で公表した。詳細については、年度内に報告書としてまとめる予定だが、席上、パネリストからはあらためて「北海道新幹線の料金は高すぎる。青函の割引切符の設定が必要」という声が上がる一方で、「首都圏などからの誘客を視野に入れれば『北海道新幹線は高すぎる』という情報を発信しすぎるのはデメリットも大きい。むしろ、『割高だが、それに見合った価値がある』と、地元の魅力の向上を目指すべきだ」という意見も出るなど、白熱した議論が展開された。

「海峡そのもののブランディングを」

青森県が2016年12月19日に青森市で開いた「青函圏フォーラム」で、パネリストとして登壇した津軽海峡フェリーの高橋俊介社長室長は、自治体や企業と連携した「サイクルツーリズム」の取り組みなどを紹介しながら、「海外も視野に、津軽海峡そのものをブランディングしていく活動が欠かせない」と強調した。

一方、青函フェリーを運航する共栄運輸の桜井耕志営業部長も、保有台数が増え続けるキャンピングカーをターゲットに、キャンピングカーの利用普及に取り組む日本RV協会や地元施設と協力しながら「全国の誘致例を参考にして、青函圏に長く滞在していいただける活動を目指したい」と意気込む。

海路の利用は台風、冬の暴風雪といった突発的事態にも大きく左右されるため、統計的な数字をみる際にも、少し長い視点での検証が必要だ。しかも、表面上の数字に大きな変化がなくても、個人客や団体客の動き、さらには物流面で、大きな変化を内包している可能性がある。単純な「鉄路と海路の関係」という視点ではなく、クルマ社会の将来像やJR北海道の今後、さらには北海道そのものの未来も視野に入れた上で、北海道新幹線とフェリーがどんな交通地図を描いていくのか、詳細な検証を続けていく必要がある。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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