トランプ政権が実は何もできていないワケ 米議会もまともに機能していない

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今のところ、共謀あるいはそれに近い行為を行ったという証拠はないが、疑念が簡単に消えることはないだろう。ジェフ・セッションズ司法長官は、大統領選に関する今後のあらゆる捜査に関与できないことになった。選挙中にセッションズ司法長官が、首都ワシントンにいるロシア大使と2回の個別会議を行ったと、ワシントン・ポストが報じたからだ。トランプ政権ではこのほか、大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官として選出したマイケル・フリン元国防情報局局長が、昨年12月にロシア大使と話した内容について、マイク・ペンス副大統領に虚偽の申告を行ったとして辞任に追い込まれている。

こうしていくつもの問題が取りざたされる中、トランプ大統領の支持率も落ち込み始めている。就任初期の段階で45%と、米歴史上の大統領の中で最も低い支持率だったが、このほどNBCニュースと、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が発表した調査では、トランプ大統領の支持率は44%に低下。とりわけ、白人の有権者間での落ち込みが目立つようだ。

共和党との「溝」を埋められる人物はいるか

高学歴の白人有権者間で、トランプ大統領の支持率が落ち込んでいるという事実は、特にトランプ大統領の顧問たちに不安を与えている。前回の大統領選では、24人の共和党下院議員が、有権者がトランプよりヒラリー・クリントン氏に票を投じた地域で当選している。つまり、トランプ大統領が引き続き、教育水準の高い白人の有権者を中心に支持率を下げ続けることになれば、これらの激戦区を勝ち抜いた共和党議員が、トランプ政権と距離を取り始めかねない、ということだ。

「もし、共和党員が2018年の中間選挙でトランプ大統領を引きずり下ろすことを決めたとしても、共和党自体もトランプ大統領とともに崩壊し始めかねない」と、NBCニュースの政治担当記者のジャック・ドット氏は話す。

3月10日には、就任50日目を迎えるトランプ大統領。さすがにこの短い期間でその手腕を判断するのは難しいが、前述のとおり、米国内ではすでにトランプ大統領は、就任1年目には自身が掲げた政策を実行できないのではないかという見方も浮上している。そのカギを握るのは、議会であり、共和党だが、トランプ政権と共和党の溝が埋まる様子もない。今後は、トランプ大統領自身というより、政権幹部がどれだけ「調整役」として立ち回れるかが重要になるだろう。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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