イタリア人に学ぶ「NOと言える人になる」方法 国連職員が学んだ「価値観の差超える」仕事術

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すべてを完璧にこなそうとするのではなくて、自分にとって本当に大切なものに、自分の持てるものすべてをしっかり注ぐべきでしょう。そのためのゴール設定であり、優先順位付けです。

では、私たちが上手にNOを言うには、どうすればよいのでしょうか。上手にNOと言うスキルは、誰もがトレーニングすることで身に付けることのできるものです。前述のイタリアの女性たちは、職場でどうNOを言うべきか、いくつかの示唆を、私たちに投げかけてくれています。

・NOと伝える前に、味方の数を増やす

これは、シンプルですが、とても有効な手ではないでしょうか。もし職場で問題を抱えているのだったら、1人でその問題に立ち向かうよりも、仲間を巻き込んで数を増やしたほうが断然、有利です。

・第三者の口からNOと伝えてもらう(自分でNOと言わない)

最終的なNOが第三者の口から伝えられたことは、私の彼女たちへの感情の緩和剤の役目も果たしてくれました。この人(第三者)がそう言うのだから仕方がない、私はそう思ったわけです。もしこれが、彼女たちの誰かから直接発せられていたら、私が彼女たちに抱いた感情も違っていたはずです。

・沈黙を味方につける

たとえ請け合わないと心は決まっていても、すぐにNOという前に、とりあえず黙ってみることも一案です。これは3人目の女性がとった行動です。沈黙は、時にどんな言葉よりも雄弁に表現してくれます。NOと言わなければならない場面でも十分活用すべきです。

イタリア人は無駄に自分を犠牲にしない

最後に、「正しいゴールの選択」と「理にかなった犠牲」の関係性についてお話しさせてください。「なぜ私だけが、こんなにたくさんのことをしなければならないのか、という自己犠牲感が消せないときは、現状を見直すよいサイン」だと先に述べましたが、この「自己犠牲感」は、私たちが普段思うよりも、はるかに多くのことを教えてくれているように思います。

ゴールは、自分にとってより深く大きな存在になればなるほど、その実現過程は困難なものになります。たとえば、オリンピック選手で考えましょう。彼らはメダル獲得というゴールに向けて厳しいトレーニングを積みます。しかし、彼らはこれを「自己犠牲」と考えるでしょうか? なぜこんなに自分だけが、と考えるでしょうか? そのように思い始めた選手は、やがて引退や休養という形でレースから自然に外れていくはずです。

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ゴールの実現と犠牲は、2つで1つのセットです。犠牲を払わずに実現する夢など存在しません。ただ、1つのセットとして成り立つものであるからこそ、正しい組み合わせを選んでいれば、こころの不協和音は発生しないのです。2つの両輪はうまくかみ合って、前進する大きなエネルギーを生むはずです。

正しいゴールと、理にかなった犠牲を選択している場合は、「なぜ自分だけが」という苦しさは出てこないはずです。NOと言えるイタリアの人々は、無駄に自分を犠牲にしません。自分が選んだゴールに向けて、バランスを取って前に進むのです。あなたが、どうしても自己犠牲感が消せない場合は、彼らのNOと言える強さに学んでみてはいかがでしょうか。

田島 麻衣子 国連世界食糧計画(国連WFP)職員

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たじま まいこ / Maiko Tajima

大学卒業後、世界四大会計事務所の一角を占めるKPMGに入所。2006年から国連世界食糧計画(国連WFP)に勤務。2007~11年、ラオスで貧困層の教育の機会向上を目的とした学校給食プロジェクトを運営。2011~13年、イタリアの本部で、人道支援プロジェクトの効果を計測するモニタリング評価のガイドライン策定に携わり、2014年からは、アルメニアに居住を移しながらプロジェクト予算の管理分析に携わった。これまでアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ラオス、アルメニアに日本を加えた7カ国に住んだ経験をもち、ともに働いた同僚の出身国は60カ国以上を数える。

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