大化けするか? カーボンオフセットビジネスが続々登場

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植林に思わぬ落とし穴 海外では詐欺行為も

日本では産声を上げたばかりだが、イギリスなどオフセット先進国では同商品が浸透。その分、過去さまざまなトラブルも噴出している。

問題の一つはプロジェクトにおけるCO2削減の有効性だ。たとえば、植林は温暖化防止活動の典型というイメージだが、実はその有効性には疑問符が付けられている。植物は生長過程でCO2を吸収するが、それは消滅することなく樹木内に蓄えられる。そのため、山火事で焼けたり、虫に食われて枯れてしまえば、CO2は再び大気中に放出されてしまう。実際、英人気ロックバンド「コールドプレイ」はインドでの植林活動により、制作・流通過程で生じるCO2をオフセットしたCDを発売。だが、管理不足で約40%が枯死し、実際にはCO2を相殺できていなかったことが後に判明した。

もう一つの問題は、クレジット(排出権)が悪用される危険性だ。クレジットには大きく分けてCERとVERがある。京都メカニズムに基づき国連が審査・承認するCERの場合、クレジットの所有権の移動はすべて公式の口座に記録され、オフセットに使った段階で政府の償却口座に移り、無効化される。

だが、独自に検証されるVERにはこうした口座が存在せず、クレジットの移動、償却などが共通の枠組みの中で管理されていない。そのため、一部の悪徳業者により、すでに無効となったはずのクレジットが再度販売される事態も起きている。

こうした前例もあり、現在日本では安全性の高いCERやグリーン電力証書(自然エネルギー発電に基づくクレジット)のみがオフセットに使われている。だが、CERの価格は現在1トン約3200円と、価格はVERの数倍。イギリスを中心にVERの取引額は2007年実績で約4200万トン、2・7億ドル(世界銀行調べ)とすでに一定の規模に成長している。買い求めやすいVERの透明性、信頼性を高めていく仕組みづくりが、ボランタリーな活動であるカーボンオフセットを本格普及させるための課題といえそうだ。


(週刊東洋経済編集部)

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