大化けするか? カーボンオフセットビジネスが続々登場

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 さいたま市に住む新婚カップル、平野さん夫妻は5月、都内ホテルで挙行した自分たちの結婚披露宴を「オフセット(打ち消し)」した。といっても式や披露宴をキャンセルしたわけではない。約3万5000円を支払い、CO2排出を“なかったこと”にしたのだ。

カーボンオフセットとは、他者がCO2削減プロジェクトにより減らした分の排出量をおカネで買い取り、自分が出したCO2を相殺することをいう。削減義務に基づく排出権取引と違い、これは企業や個人が自主的に行う活動だ。

平野さんカップルの場合、企画元のジーコンシャスを通じ、韓国のフロンガス分解プロジェクトにより獲得された排出枠約7トンを購入。当日の施設利用、列席者の交通利用、そしてメキシコ・カンクンへの新婚旅行の飛行機等から排出されるCO2を相殺した。また列席者には5キログラムの排出権を引き出物として配った。

新郎の平野卓也さんは土壌調査の仕事をしている関係で、環境配慮型の披露宴を思いついた。「マイ箸」などを持参する、いわゆる「LOHASな人」ではない。だが、「列席者も『印象が良かった』と言ってくれたし、自分たちも環境意識が高まった。やって良かった」と満足気だ。

続々登場の関連商品 消費者への浸透は「?」

 元旦の年賀はがきを皮切りに、定期預金、自動車、お中元など、今年に入り続々とオフセット商品が登場、連日新聞紙面をにぎわしている。

世界銀行の報告を基に推定すると、昨年の世界のカーボンオフセット市場は欧米を中心に優に300億円を超すと見られ、なお急拡大を続けている。国内でも、今年4月末の時点で約80点のオフセット商品(環境省集計による)が登場し、7月現在では100点以上に上るもようだ。環境意識の高い「LOHAS」層を対象とした民生品が目立つが、企業向けの商品も出始めた。

変わり種は、企業のサーバー等を保管するデータセンター事業を手掛けるビットアイル。7月からカーボンオフセットサーバーのレンタルを開始した。大量の電気を使用するサーバーは年間で1台当たり0・3~3トンのCO2を排出する「環境劣等生」。そこでCSRの一環として、排出するCO2(年3000~1万円相当)を相殺するレンタルサーバー利用を顧客企業に提案する。

同社の狙いは戦略商品のレンタルサーバーを売り込むこと。現在は同社が管理するサーバーの98%は顧客企業からの預かり物であり、レンタルサーバーの比率はごくわずかだ。顧客に場所を貸すだけでなく、オフセットサーバーのレンタルを勧めることで、事業の付加価値を高めたいと考えている。

だが、カーボンオフセットが商品を選ぶ際の大きな訴求力となると考えるのは、時期尚早なようだ。「お客さんにとって、オフセットはまだ、お得感を演出する特典程度の魅力しかない」と話すのはJTB関東でオフセット旅行を企画している樋口誠司・企画開発マネージャー。同社では昨年4月から「CO2ゼロ旅行」と銘打った国内バス旅行を企画、07年度の申し込み数は目標を大きく上回る1万5000人と好評だ。

だが、ある日帰りツアーについて行ったアンケートでは、カーボンオフセット商品と意識して申し込んだ客はわずか3分の1。多くは昼食、お土産付きで3900円という商品自体の魅力により申し込んだ客だった。「結局、高いと誰も買わない」(樋口氏)というのが、日本版カーボンオフセットの現状のようだ。

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