フェイスブックが悩む、モバイル化のジレンマ 日本のモバイル体験にヒントあり

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モバイルへの移行は難しい?  

フェイスブックのスマートフォン向けアプリはかつて、批判の的になっていた。利用者が多く人気のアプリであったが、動作の遅さや不確実性が指摘され、アプリのオーバーホールを余儀なくされたこともある。デスクトップでの体験をモバイル化する際に、シリコンバレーの成長企業であっても、その文化やニーズの違いに対応する際には難しいようだ。フェイスブックはモバイルメッセージング企業の「Beluga」や、モバイル写真加工・共有の「Instagram」などを買収し、社内にモバイルの血を流し込んでいる。  

一方、Twitterに取材すると「我々はこれまでも、これからもモバイルベースのサービスを提供していく」と、モバイル化に悩む他社に対するアドバンテージを自覚している。テレビを見ながら、移動しながら、目の前の出来事や流れてきたニュースを投稿したりキャッチしたりする、「ながら」利用も盛んで、その場所は家の外、内と多彩だ。  

モバイルに適した小さな情報の固まりとリアルタイムという2つの特徴を持つTwitterは、一定のポジションを確保したといえる。フェイスブックもニュースフィードにリアルタイム性を盛り込んだり、チェックインなどのモバイルらしい位置情報共有の方法を提供しようとしている。  

ただ、こうしたモバイルらしさを盛り込めば盛り込むほど、あるいはモバイルでの活用が進めば進むほど、ウェブで上手くいっていた検索やコンテンツ、その人の好みに合わせて配信される広告が、そのままの形では上手く働くなっていく。広告を主力商品とするグーグルやフェイスブックが、ビジネスモデルを以下にモバイル対応させていくか、注目したいところだ。

モバイル利用の「センス」先進国、日本  

シリコンバレーのモバイル対応の話で出てくる「ながら」利用や携帯端末での操作性の議論は、ちょうど日本で1999年のiモード登場以来始まった、モバイルインターネットとそのサービス、アプリ、マーケティング活用といった一連の流れを繰り返しているように思える。  

モバイル体験の量や「センス」は、日本が依然として5〜10年のアドバンテージを持っている、と筆者は考えている。アップルやグーグルといった米国のプラットホームと、iPhoneやGALAXYといった米国や韓国のデバイスを使っているが、ユーザー体験の層の厚さはまだ日本にあるのではないだろうか。  

LINEのヒットやモバイルゲーム、動画視聴などは、こうした日本のモバイル体験を上手にパッケージ化している証しではないだろうか。Facebook for Every Phoneの取り組みは、こうした日本のモバイル体験をスマートフォンだけでなく、新興国のケータイに持ち込むヒントを与えてくれているのではないだろうか。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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