ハリスツイード会長「ロゴ悪用品は廃棄せよ」 商標を誤用する販売業者に法的措置も辞さず

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――最大の問題は何だと考えるか?

ハリスツイードの「オーブマーク」と「ハリスツイード」という商標は、ハリスツイード協会が使用の権利を有しています。このマークは単なる登録商標ではなく、品質保証のマークでもあります。

この商標の使用には、全体の製品に対して50%以上ハリスツイードの使用を義務づけるなどガイドラインを設けています。販売の際にガイドラインの順守を義務づけていますが、それが守られていない製品が氾濫していることが問題です。このような製品は知的財産権の侵害に当たります。

「ブランドの物語を伝える必要がある」

――具体的にどのような措置を講じる予定か?

ローナ・マコーレー(Lorna Macaulay)/2008年にハリスツイード協会会長に就任、前職はスコットランド政府で経済開発職に従事。親子代々ハリスツイードに携わっている。スコットランドのアウター・ヘブリディーズ諸島、ルイス島在住。18歳と21歳の息子の母(撮影:梅谷秀司)

私たちは今まで、日本市場はハリスツイードとこのクラフトの価値を理解し、すべての商取引は信頼に基づくべきという態度を取ってきました。しかし、この商標誤用問題に関しては何らかの法的措置を取らざるをえない、取る必要があると考えています。

今回は法律の専門家もアドバイザーとして参加し、スコットランド国際開発庁の協力を得ながら、抜本的解決に向けて具体的な対策を講じる予定です。過去に米国や中国ではありますが、ハリスツイード協会が日本市場に向けて法律的対策を講じるのはこれが初めてのことです。

さらに製造業者であるミルに対する教育の必要性も感じています。ガイドラインを厳守できる業者のみに販売する姿勢がなければ、今後も同様の問題が起こる可能性があるからです。

――今回の問題を踏まえて、新たなガイドラインを発表する予定だ。

今回の問題を踏まえ、より具体的で理解しやすい商標使用に関するガイドライン概要を作成しました。2016年に日本語版を公開しましたが、周知が不十分でした。新しいガイドラインでは、使用に際して何が許され、何が許されないのか、3ページで簡潔に説明します。これにより理解の徹底が図れることを期待しています。

このガイドラインは近日中に新しいハリスツイード協会のホームページで公開するので、誰もが閲覧可能です。

――サリーム・ダロンヴィル氏のハリスツイード・アンバサダー就任が発表されたが、その理由と役割とは?

協会の代理人として日本に住み、日本のファッションセクターを理解し、プレスとメディアに対して発言し、行動を起こせる人物が必要だと考えたからです。手織りで作られるハリスツイードの物語が失われるとしたら、それは本当に悲しいことです。

そうならないためにも、サリームのような人物が、ハリスツイード協会と日本市場のコミュニケーションを円滑にする役割を担ってくれることを期待しています。

今回のような問題が起きて、日本市場に向けたブランド認知向上のための活動や、なぜこの問題が起きたのかの説明、日本の消費者へ向けた、さらなるコミュニケーションの必要を強く感じています。

このスコットランドの小さな島から来た産業が、どうしてはるか遠い日本の地にあるのか。なぜ、日本市場が重要なのか。これがブランドの価値をおとしめるものなのか。私たちには伝える必要があります。私たちのブランド価値を保護するためには、ストーリーを伝えることが最も重要だと考えているからです。

長谷川 喜美 ジャーナリスト

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はせがわ よしみ / Yoshimi Hasegawa

英国を中心にヨーロッパの魅力をクラフツマンシップと文化の視点から紹介。メンズファッション、ビスポークスーツとシューズ、シングルモルトウィスキーなどに関する記事を雑誌等の媒体に掲載。著書に『ハリスツイードとアランセーター』、『ビスポーク・スタイル』(共に万来社刊)、『英国王室御用達』(平凡社刊)など。www.instagram.com/yshasegawa/

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