──捨て身の旅がない、というのは何を意味するのですか?
今の若い人の旅ってのは情報を追体験する旅だよね。事前にネットで情報をためて、この角を曲がればあの店があるとすでに知っている。追体験の旅ってのは自分を壊さないんだよ。自分のそれまでの生き方とか、異質なものにぶつかって壊していくのも旅なんだよね。今の若者の旅は情報でガードした憶病な壊さない旅。だから何かに出合う感動や動揺がない。壊れると、何かほかのものを入れて補完せざるをえない。そこで成長が生まれる。受験で失敗するか成功するかしかないような生き方だから、失敗を恐れる傾向がものすごく強い。大人になってからも失敗は避けて生きたい、っていう。
──最果ての島、強くなりたいと願う太古、彼を迎える強烈な個性の老人たち。この構図はどこから?
実際に10年前に現地を旅してモデルとなる人物に出会った。うだつの上がらない老人ガイドで、こりゃ大丈夫かなと思うような人。最後に彼の家へ招かれたら、若い頃にデカい大鮃を釣り上げた写真が飾ってあった。よぼよぼ老人とのギャップに、オッと思ってね。それが種になっている。島はだだっ広くて風が吹き荒れていて、人と平原と羊と、あとは何もない。すると言葉が生まれやすいというか、真っ白いキャンバスに言葉を書きたくなる。そのときの記憶が僕の中でずっと沈潜していて、あるときふっと浮かんできた。沈潜している中で自然と発酵し、浮かんできたときには酒が熟成していた。
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